離職率を下げるエンゲージメントとは?効果や方法を解説
「人事・組織開発におけるエンゲージメントとは、どういうものか?」
「エンゲージメントが向上すると、どんな効果があるのか?」
人手不足や生産性の課題を抱える企業において、エンゲージメントの向上は効果を発揮してくれます。
この記事では、エンゲージメントの詳細からメリット・デメリット、高めるための方法まで紹介していきます。
エンゲージメントとは?
人事の領域や人材開発におけるエンゲージメント(従業員エンゲージメント)とは、「従業員が組織や仕事に対してどれだけの熱意や貢献意欲を持っているか」を表すものです。
エンゲージメントの高い従業員は、自分の仕事と会社の業績に関心を持ち、自分の努力で成果を上げていると感じています。仕事や会社に対して、感情的なつながりを持っていることが多いです。そのため、給与以外にも満足感・充実感を得ています。
エンゲージメントの高い組織は、従業員の生産性が高く、離職率が低くなりやすい。つまり、エンゲージメントは組織のパフォーマンスを向上させる重要な要素です。
エンゲージメントの構成要素、ポイント
エンゲージメントにおけるポイントを一言で表すと、「相互の信頼関係」です。
- 社員同士:お互いに尊敬、信頼しあっている関係
- 会社と社員:会社に貢献したい欲求、社員の自己実現を助ける
こうした関係を築けているからこそ、「ここで働きたい。役に立ちたい」という意欲が高まります。
WTW(ウイリス・タワーズワトソン)による3つの構成要素
組織人事のコンサルティングを行っているWTWによるエンゲージメントの構成要素を紹介します。エンゲージメントを高めるには、これらの要素を促すことを意識するとよいでしょう。
- 理解度 (Rational):会社の進む方向性を具体的に理解、腹落ちし、それを支持できる
- 共感度(Emotional):組織(同時に仲間にも)に対して、帰属意識や誇り、愛着の気持ちを持っている
- 行動意欲(Motivational):組織の成功のために、求められる以上のことを進んでやろうとする意欲がある
類似した言葉との違い
従業員満足度
従業員満足度は、仕事内容、報酬、人間関係、福利厚生やマネジメント、職場環境、働きがいなど、仕事や職場にどれくらい満足しているかを示す指標です。
現在の待遇、環境に対する評価であるため、仕事や会社に対して熱心な意欲を持っているとは限りません。
愛社精神
従業員が所属し、働いている企業を愛する気持ちです。
基本的には、エンゲージメントと似たような意味を持つと言えます。
強いて挙げるなら、愛社精神の場合には、好きな気持ちや誇りに思う気持ちの方に、より着目した言葉と言えるでしょう。エンゲージメントの場合には、貢献意欲といった行動を促す要因にも着目されています。
ロイヤリティ(ロイヤルティ・Loyalty)
直訳は、忠誠心。従業員の会社に対する信頼や帰属意識、愛着などを指す言葉です。ロイヤルティの高い組織は、生産性が高く、離職率の低下が見込めるとされています。
エンゲージメントとの違いは、ロイヤルティの場合には、会社と従業員の間に上下関係が存在します。社員が企業に忠誠心を持っている状態です。
一方で、エンゲージメントは、双方向の関係として扱われます。この会社だからこそ感じられるやりがいや、報酬、環境、人間関係など、会社と個人や、従業員同士の相互の関係がより重要です。
なぜエンゲージメントが重要視されるのか?
1.離職率を下げ、優れた人材を採用するため
- 40代、50代の転職経験者の割合が約60%
- 現在、副業・兼業をしていると回答した人の割合は、22.6%
- 今後、副業をしたいと思っている人の割合は、85.5%
こうした調査からも、転職や副業、リモートワークの普及など、働き方が大きく変化していることがわかります。キャリアップ志向の強い優秀な人材が自分に最適な環境を求めるのはもちろん、サービス業や教育支援業などは高い離職率となっています。離職率が高くなれば、採用コスト・教育コストがかかるとともに、組織の生産性や既存社員の業務量などにも悪影響を及ぼします。
エンゲージメントが高い組織は、離職率が下がる傾向が見られるため、人材確保・教育の面で有効とされています。
「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」第1弾 転職経験や転職意向等について
2.時代の変化に伴う「仕事観」が変化しているから
かつての仕事に対する考え方は、大きく変化してきています。特に若い世代ほど、これまでは当たり前だと思っていた考え方とは、まったく違う考え方を持っていることもよくあります。
年齢に限らず、仕事環境・経済状況といった前提が変化しているため、過去の通りでは、社員の生産性は上がらず、離職率も高くなる可能性があります。
こうした変化を理解した対策が欠かせません。
3.主体性、生産性、クリエイティブが求められる時代に
少子高齢化が進み、優秀な人材の確保はますます難しくなっていきます。離職を防ぎ、生産性を高めることが課題となっています。
また、日々技術が進化し、新たな課題が生まれてくる時代にあるので、指示どおりに行動できる以上の能力が、多くの従業員に求められるようになってきています。課題解決力やクリエイティブ力など、一人ひとりの強みや得意を活かすことが重要でしょう。
こうした課題を解決するのに、エンゲージメントの向上は効果を発揮します。
日本企業のエンゲージメントスコアは世界最低レベル
米ギャラップ社が2023年に発表した調査「State of the Global Workplace 2023:GALLUP」によると、日本のエンゲージメントスコアは5%。世界平均は23%のため、かなり低い結果です。
2017年度の調査では6%だったため、1%とはいえさらに低下しています。
逆説的に、エンゲージメントを向上させることができれば、活躍する企業への道が拓けると言えます。
エンゲージメントが高まることで得られる効果・メリット
生産性・業績の向上
複数の研究から、エンゲージメントが高まることで、生産性や業績が向上することがわかっています。組織開発、人材育成といった分野はどうしても後回しにされやすい分野です。しかしながら、生産性などの向上に貢献することがわかれば、エンゲージメント向上にも取り組みやすくなるはずです。
また、エンゲージメントが高い組織づくりは、長期的な効果を見込むことができます。
モチベーションエンジニアリング研究所と慶應義塾大学大学院経営管理研究科/ビジネス・スクール 岩本研究室による共同研究
この研究では、「ES(エンゲージメントスコア)1ポイントの上昇につき、当期の営業利益率が0.35%上昇する」ことがわかったそうです。
株式会社アトラエとウイングアーク1st株式会社による共同研究
日本人を対象とした研究で、「wevox」を活用したエンゲージメントスコアが10 ポイント高いチームは、受注率が10%程度高い傾向が見られた。
離職率の低下
エンゲージメントの高い従業員と低い従業員の間では、離職率に大きな差が見られます。
たとえば、アメリカのコンサルティング会社CEB(Corporate Executive Board)が20004年に発表した「Driving Performance and Retention Through Employee Engagement」によると、エンゲージメントの高い従業員は1.2%の離職率だったのに対して、低い従業員は9.2%の離職率を記録したと報告されています。
モチベーションエンジニアリング研究所の研究結果でも、「エンゲージメントが高いほど離職率が下がる」という結果が出ています
こうした研究からエンゲージメントを向上させることで、人材確保に効果を見込めのがわかります。
従業員のモチベーションアップ
エンゲージメントが高まるということは、仕事に対して働きがいを感じられ、社員同士の関係も良好なものになっていっているということ。会社の理念やミッションに共感していれば、給与以外の働く意味を感じることにもつながります。
こうした環境は、従業員のモチベーションアップを促すでしょう。
組織の活性化、雰囲気が良くなる
エンゲージメントが高い企業では、会社のミッションや理念に共感するなど、給与以外での働く理由を持つ人が集まっている傾向にあります。
似たような価値観を持つ人が集まり、目指す目標が明確なため、コミュニケーションが活発になり、組織は活性化していきます。
エンゲージメントに関する批判・デメリット
エンゲージメントサーベイ(調査)、エンゲージメント向上施策に伴うコストの増加
エンゲージメント向上のために、現在のエンゲージメントの状態を確認することが求められます。
エンゲージメントを調べるにあたっては、ツールの導入などによるコストがかかります。エンゲージメントを高める施策を行うために、費用がかかるケースもあるでしょう。
また、金銭的なコストだけではなく、調査や変化に対するストレスが生まれることもあります。調査に協力する時間や手間を嫌がる。新しい取り組みに対する抵抗感。制度が変わることへの不安。
エンゲージメント特有の問題ではありませんが、エンゲージメント施策でも発生することが考えられる問題です。
燃え尽き症候群、ワーカーホリックのリスク
過剰にエンゲージメントが高まった従業員は、仕事第一になってしまう可能性があります。生産性が高く、長時間働くことを望むかもしれません。
短期的には会社としても従業員も、成果を出して満足するでしょう。
しかし、長期的には、体調を崩したり、燃え尽き症候群になったりと、ネガティブな影響をもたらす可能性があります。
コミュニケーションの変化に対する抵抗
リーダーやマネージャーによっては、エンゲージメントが高まることに伴い、部下が主体的になることで、ストレスを感じるかもしれません。
多くの企業やリーダーが「自分で考え、行動する」のを求めていますが、実際には「言ったことを率先してやってくれる人」の方がうれしいと思う人もいるものです。自分の指示どおりに行動するのであれば、ストレスは少ないでしょう。
しかし、まったく違う考え方や取り組み方をする人がいると、それを受け入れることにも、理解しようとすることにもストレスや労力が必要となってきます。
長期的には主体性が高まることが望ましいですが、短期的にはストレスが増すことが考えられます。
測定に関する科学的根拠の薄い手法、分析
エンゲージメントに関する批判として、調査方法の不適切さ、あいまいさが挙げられます。
エンゲージメント調査に用いられるアンケート調査やパルスサーベイ。調査内容を分析する手法は、科学的根拠が薄い手法だと批判を受けることがあります。従業員からは「意味がない」と言われることも。
効果的な調査、分析を行うとともに、データだけではなく、従業員の実際の行動や状態の変化を観察することも欠かせません。
エンゲージメントを調べる方法
ギャラップ社が270万人以上の調査に使ってきた「Q12」と呼ばれる質問を紹介します。
- 私は仕事で何を求められているかを知っている
- 私は自分の仕事に必要な材料と道具を与えられている
- 仕事では、毎日自分のベストを尽くす機会がある
- この7日間で、良い仕事をしたと認められたり褒められたりした
- 上司や職場の誰かが、自分を一人の人間として気にかけてくれているようだ
- 成長を後押ししてくれる人が職場にいる
- 仕事では、自分の意見が尊重されるようだ
- 会社の使命や目的が、自分の仕事を重要なものだと感じさせてくれる。
- 仲間や同僚は、質の高い仕事をすることに全力を尽くしている
- 職場に親友がいる
- この半年間、職場の誰かが私の進歩について話してくれた
- この1年、私は仕事で学び、成長する機会に恵まれた
上記の質問に対して、以下の回答と配点をつけます。
完全に当てはまる(5点)
やや当てはまる(4点)
どちらともいえない(3点)
やや当てはまらない(2点)
完全に当てはまらない(1点)
回答と配点から平均値を出すことができます。平均値とその影響は次の通りです。
- 全世界での調査の平均値は「3.6」
- 「3.8」を超えると業績の向上につながる
- 「3.3」を下回ると、業績への悪影響が大きい
Gallup’s Employee Engagement Survey: Ask the Right Questions With the Q12® Survey
エンゲージメントを向上させる要因
ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された調査による、エンゲージメントを促進する最も重要な要因3つを紹介します。
How Companies Can Improve Employee Engagement Right Now
1.従業員の仕事と、従業員の価値観を結びつける
仕事が従業員の価値観、つまり彼らが大切にしていることと結びついたとき、エンゲージメントは高まる。仕事内容や会社のミッション・ビジョンが、自分と合っていると感じると、給与や労働時間といった待遇ではなく、「ここで働いていたい」と思うようになります。
会社のミッションと従業員の価値観を一致させるには、ミッションを掲げるだけでは不十分です。日々の仕事が、どのようにミッションとつながっているのかを理解し、感じてもらう必要があります。
たとえば、病院で働く清掃員は、単なる掃除をしているのではありません。抵抗力の落ちている患者が多くいる病院内の、衛生状態をキレイに保つことで、患者を守っていると言えます。
一般的な会社のビルで働く清掃員も、会社をキレイに保つことで、気持ちよく仕事ができる環境をつくり、生産性やモチベーションの維持・向上に貢献していると言えるかもしれません。
重要なのは、一般にどう思われているかではなく、従業員が「自分はどのような仕事をしているのか、貢献を果たしているのか」を認識すること。
会社のミッションに共感するとともに、日々の具体的な業務内容が価値観と結びついているのを実感することでエンゲージメントが高まるでしょう。
2.仕事そのものをストレスの少ない、充実したものにする
従業員の強みにあった仕事、内発的動機づけにつながる仕事ができるようにする。
内発的動機づけ
内面から生まれる興味・関心や意欲のこと。好奇心や向上心は、それに当たります。金銭や時間などの報酬や名誉など、外から与えられるものに動機づけられている場合には、「外発的動機づけ」とされます。
内発的動機づけの場合には、主体性が高まり、それに伴って生産性の向上などが期待できます。
一人ひとり、強みや興味を感じる要素は違います。
強みにあった業務を行えるようにすることや、現在の仕事のままでも内発的動機づけを育むことによって、エンゲージメントの向上が望めます。
3.時間の豊かさを創造する
お金だけではなく、時間でも従業員に報いることが重要だとしています。
日本においては、サービス残業に対する意識の変化やノー残業デイの導入など、労働時間にも変化が起きています。
しかし、IT技術の進歩やリモートワークの普及により、職場の外でも仕事をすることができてしまうし、プライベートな時間に仕事の問い合わせが入って対応することも起こっています。
Hubbubが行った、134カ国から集まった1万8000人に対する休息に関する調査では、「休息が十分だ」と感じる人は「休息が不足している」と感じる人の幸福度スコアが2倍高かった。このことから、適度な休息は幸福度に影響を与えていると言えそうです。
また、休息は生産性を向上させることにもつながっています。
そのため、時間の豊かさは生産性の向上と、精神的な充足感を満たすことにつながります。
エンゲージメントを向上させる方法
エンゲージメントを向上させる方法は、人材配置や人事評価制度の改善など人事領域によるものから、コミュニケーションの活性化やサンクスカードのような個人レベルで取り組むことができるものまで様々です。
その中で注目したいのは、ギャラップ社が最大の発見と呼んでいるものです。
「マネージャーやチームリーダーだけで、チームエンゲージメントの不一致の70%を占める」
One of Gallup’s biggest discoveries: the manager or team leader alone accounts for 70% of the variance in team engagement.
What Is Employee Engagement and How Do You Improve It?
つまり、管理職やリーダーは、エンゲージメントに非常に大きな役割を担っていると言えます。
管理職・チームリーダー・個人レベルの向上方法
管理職やリーダーが個人としてエンゲージメント向上に取り組む場合には、メンバーとの関係やコミュニケーションがより重要になってくるでしょう。メンバー一人ひとりとの関係では、信頼関係の構築が欠かせません。
信頼を生み出すキーワードは「共有体験」。
私たちは自分と似ているもの、近いものに親近感を覚えます。趣味や出身地が同じだったり、海外で日本人に会ったりすると親しみを感じると思います。
相手の価値観・本音を理解できると、非常に深いレベルでの共有体験を得ることができます。相手との深い信頼関係を構築できます。
相手の本音を理解し、心を動かすコミュニケーションを実現するGHCDコーチングは下記のリンク先で体験できます。
従業員の価値観を理解する
価値観というのは、その人が本当に大切にしているもの。本人も気づいていないことがよくありますが、自覚していなくても価値観によって行動や判断を決めています。
この価値観を理解して尊重してもらえると、大切にしてくれていると感じるのです。
エンゲージメントを高める上で、お互いに尊重し合う関係を築くことが重要です。
1on1の実地
価値観など相手のことを理解し、コミュニケーションを深める機会として、1on1は最適です。
エンゲージメント向上のためには、単に目標や進捗の話をするだけではなく、お互いの理解を深めるコミュニケーションの機会として捉えることが重要です。
称賛の文化をつくる
一人ひとりを個人として尊重し、認める文化も重要です。
人は誰しも重要だと思われたいものです。華々しく表彰されるのがうれしい人も、普段の仕事ぶりを認めてもらえるような一言がうれしい人も様々ですが、「自分に関心を持ってくれている」「重要だと認めてくれている」と感じられると、貢献意欲も高まります。
全社的な施策としては、社長賞などによる表彰。
個人やチーム単位でもできることとしては、相手を認める言葉をかけるようにしたり、サンクスカードを導入したりすることによって、お互いに称賛する文化を築いていくことができます。
全社的な向上施策
企業理念、ビジョンを掲げる
これらはいわば、会社の価値観。何を大切にしていくのか、どんな世界を実現したいのか。会社の目指しているものに共感するからこそ、経済的な利益を超えて、貢献する意欲が湧いてきます。
一方で、理念やビジョンを掲げていても、結局は売上しか重視しないのであれば、エンゲージメント向上には効果を発揮しにくいでしょう。
繰り返しメッセージを伝えるとともに、日々の仕事に反映されているか、日々の仕事がどのような意味を持っているのかを実感できるようにすることが大切です。
この後紹介する、エンゲージメントの高い企業の代表例であるスターバックスの事例がヒントになるでしょう
適切な人材配置
従業員が自分の強みや能力を発揮しやすい業務や、望むキャリア形成に役立つ立場に就くことが、エンゲージメントの向上や組織の活性化につながるでしょう。
自分の能力を発揮して、会社や周囲に貢献することで、充実感を得ることができます。
また、適切な人材配置は、きちんと自分たちのことを見て、評価してくれていると実感できるので、モチベーション向上にもつながります。
マネジメント層、リーダー層の教育
エンゲージメントを高めるのに、マネージャー・リーダーは欠かせない存在です。コミュニケーションを取り、部下の支援を行うなど、直接的な影響を与える存在だからです。
一度はマネージャーを廃止したGoogleも、議論とリサーチの末、再びマネージャーを置くようになっています。
そのため、マネージャー・リーダーの教育はエンゲージメント向上に効果を発揮します。マネジメント能力やコミュニケーション能力が高まることによって、部下の生産性やモチベーションを高めることにつながります。
権限委譲に取り組む、従業員にオーナーシップをもたせる
自分で考えて行動できる状態は、主体性を向上させるのに役立ちます。
言われたことしかできない環境では、主体性を発揮することはありませんし、萎縮してしまうことも考えられます。
従業員に裁量を与えて、自分で考えて行動できる環境を整えることで、エンゲージメントの向上と課題解決力など能力の向上を期待できます。
働きやすい環境を整える
働いていてストレスの少ない環境の整備も、エンゲージメント向上に役立ちます。
パソコンやネットワークなど仕事に欠かせないツールの整備や、集中しやすい環境の整備。あるいは、コミュニケーションが円滑に取れる環境など、人間関係もストレスに大きく影響を与えます。
従業員エンゲージメント向上における企業での取り組み事例
スターバックス
日本でも人気の高いスターバックスは、エンゲージメントの高い企業の代表例です。
日本では、3万3千人を超えるパートナー(従業員)が働いていますが、その8割以上がアルバイト。スターバックスから連想される一人ひとりのお客様に寄り添ったサービスは、彼ら彼女らによって提供されています。
- 手書きのメッセージが書かれたドリンクカップ
- 注文を迷っているお客様へのおすすめの紹介
- カスタマイズの提案
- レジ前に並んでいる人が多いときには、メニューを渡したり、話しかけたり
実は、スターバックスにはサービスに関するマニュアルがほとんどないそうです。上記のような、心のこもった接客は、パートナー一人ひとりの主体性によるものです。
この核にあるものこそ、「エンゲージメント」だと言います。
スターバックスのパートナーは「顧客のため、店舗のため、地域のために何かをしたい」という強い欲求を持って働いてくれています。この欲求によって、パートナーは常にお客さまが求めていることを考え、自発的に行動することができるのです。
マニュアルのないスターバックスは、なぜエンゲージメントを高められるのか(前編)
パートナーたちのエンゲージメントは、スターバックスとパートナーとの「関わり方=つながり」を感じることで生まれます。つながりとは、スターバックスという会社が大切にしている価値観と、個人が大切にしている価値観が重なり合い、共感することで芽生えるもの。つながりがあることで、パートナーはスターバックスを自分の居場所だと感じ、スターバックスとともに成長しようという、内発的動機になるのです。
では、どのようにエンゲージメントの高いパートナーを育成しているのでしょうか。
採用時点で、スターバックスのミッションやバリューの一部でも共感してもらえるよう働きかけています。
そして、将来のなりたい姿を考えてもらいます。それを実現するために、スターバックスでの仕事を通じて身につける「個人の成長目標」や「パフォーマンスに関する目標」を設定します。
こうした目標をもとに、4ヶ月ごとの人事考課の際に、振り返りを行っていきます。また、ストアマネージャーだけではなく、アルバイトリーダーやパートナーも含めてお互いにコーチングやフィードバックを行っています。
内発的動機を引き出すには、ツールやプログラムも重要ですが、最終的にはやはり「人と人との対話」が鍵になります。こうした「対話」によるマネジメントには、スターバックスでも今後、さらに力を入れていきたいと考えています。
マニュアルのないスターバックスは、なぜエンゲージメントを高められるのか(後編)
会社のミッションやバリューへの共感と、パートナーの人生につながる「個人の成長目標」といった双方向の取り組み。そして、内発的動機を引き出すコミュニケーションが、高いエンゲージメントを生み出していることがわかります。
さらに、スターバックスの価値観やパートナーの接客によって、顧客もファンになる好例だと言えます。
マニュアルのないスターバックスは、なぜエンゲージメントを高められるのか(前編)
マニュアルのないスターバックスは、なぜエンゲージメントを高められるのか(後編)
補足:マーケティング領域におけるエンゲージメントとは?
エンゲージメントは、人事・組織開発に限らず、マーケティング領域でも使われる言葉です。どのようなものか簡単な紹介をします。
Q.マーケティングにおけるエンゲージメントとは?
マーケティングにおけるエンゲージメントは、企業そのものや商品、ブランドなどにつながりや愛着を感じている深い関係性のこと。機能や価格を超えて、「この企業だから買う」「このブランドだから欲しい」といった高いロイヤルティを持つため、積極的な購買や周囲へのシェアなど、消費者が能動的に行動する状態にある。
Q.各種SNSのエンゲージメントとは?
SNSにおけるエンゲージメントは、「いいね」「コメント」「シェア」など、ユーザーのリアクションを指します。
Twitterのエンゲージメント
Twitterでエンゲージメントとして扱われるのは以下の内容です
- いいね
- RT(リツイート)
- リプライ
- ツイートの詳細表示
- 投稿経由のフォロー
- 画像、動画のクリック
- リンクのクリック
- プロフィールのクリック
Facebookのエンゲージメント
Facebookでエンゲージメントとして扱われるのは以下の内容です。
- いいね
- シェア
- コメント
- 動画再生
- その他のクリック(アイコン、写真、もっと見る、など)
Instagramのエンゲージメント
Instagramでエンゲージメントとして扱われるのは以下の内容です。
- いいね
- コメント
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まとめ:エンゲージメントの高い組織は、人材確保・業績向上に期待できる
エンゲージメントの向上は、定着率の改善(離職率の低下)、生産性・業績の向上に期待することができます。会社にとって価値ある取り組みであることはもちろん、エンゲージメントの高い組織で働く従業員にとっては、給与だけではなく、やりがいや自己実現といった精神的な充実を得ることもできるため、会社・個人どちらにも価値ある要素です。
人手不足や生産性の改善に課題がある現代において、重要な経営戦略と言えるでしょう。