オートクライン効果とは?主体的な変化を促すコーチングのポイント!

コーチングスキルを活用する上で、外すことができないポイントが、オートクラインです。

オートクラインのおかげで、相手は自ら考え、主体的に行動するようになります。コーチングで言われる「答えは相手の中にある」を表す効果と言えます。

このオートクライン自体は日常会話でも起こるものですが、コーチングスキルを活用することで、狙って起こすことができるようになります。

この記事では、オートクラインが効果的な理由や狙って起こすポイントをお伝えしているので、ぜひお役に立ててください!

目次

オートクラインとは?

オートクライン(またはオートクライン効果)はコーチング用語で、「話すことで自分の考えや感じていたことに気付くこと」です。もう少し専門的な説明だと、「自分が話した言葉を自分の耳で聞くことにより、考えや感じていたことなどに気付く作用」です。

コーチングにおいて、相手の行動や変化を促すカギとなる要素とされています。

元々は、医学用語で「自己分泌」を意味する言葉。
ある細胞から分泌された物質が、分泌した細胞そのものに作用すること。

オートクラインという言葉を知らない人でも、その経験はあると思います。友人や同僚に悩みを相談している内に、相手からなにも言われていないのに、自分で解決策が思い浮かんでくるような経験。

あるいは、内容がまとまらないまま話しはじめたのが、段々と考えが整理されてきた、ということもあるかもしれません。

これらは、オートクライン効果の作用です。

パラクライン

オートクラインに関連する言葉に「パラクライン」という用語があります。コーチング用語としては、話し手の考えや感情などの情報を相手に送ることを言います。

こちらも元々は医学用語。細胞の分泌物が、(直接)近隣の細胞に作用することを指します。

オートクライン効果のメリット

オートクラインを相手に起こすことができたとしたら、相手は自然と行動するようになります。日常的な会話でも起こりますが、コーチングを活用することで狙ってオートクラインを起こすことができるようになります。

相手が自然と行動するのは、オートクラインには2つのメリットがあるからです。

1.納得感があるので、行動につながりやすい

オートクラインを一言で表すと、「自分で気付く」ということです。なので、オートクラインによって得られた考えやアイデアというのは、非常に納得感があります。行動につながりやすく、継続しやすいものになっています。

主体的な行動は、納得することで生まれます。逆に、説得で人は動きません。もし動いたとしても、それは仕方なく行動しているに過ぎません。どんなにいいアドバイスで理屈の上では「その通りだな」と思ったとしても、納得していなければ動けないものです。

説得で動くのは、外発的動機づけによるものがほとんど。いわゆるアメとムチですね。短期的な効果はありますが、自分から行動するようになるわけではありませんね。報酬や罰がなければ、行動しなくなります。

一方で、納得というのは、内発的動機づけです。自分の価値観や興味関心に動機づけられているため、自分から行動するようになります。スピードも速くなりますし、自然と工夫してPDCAが回っているでしょう。

2.考えや感情を整理できる

人は自分の考えや感情をきちんと把握しているわけではありません。なんとなくそう思う、という直感的な考えを持つこともあるでしょう。

それ自体には良い悪いはありませんが、それでは人にわかってもらうことは難しくなります。迷いながら行動することにもつながります。

  • 上司のアドバイスに納得できない。でも、なぜなのか分からない
  • 相手に言われたことが、なんとなく気になってモヤモヤしている

オートクラインの働きによって、話している内に、自分が感じていたことやモヤモヤの理由が見えてきます。すると、スッキリした気持ちで行動するようになるでしょう。

モヤモヤを抱えていると、行動が鈍ったり小さなストレスになったりするので、生産性の向上やメンタルケアとしても、効果的です。

オートクラインを起こすポイント

話し手が、自分の考えを話せること

オートクラインを起こすには、話し手が自分の考えを話せることが大事です。意識すると良い2つのポイントがあります。

  • 相手の話をよく聴く(傾聴する)
  • 安心して話せるようにする

傾聴する

まずは、相手が話すことです。そのためには、聞くことを心がけてください。コーチングのスキルで、「傾聴」と言います。

傾聴する際には、8割聴く意識がオススメです。というのも、つい自分の考えを話したくなったり、アドバイスしたくなったりするからです。特に上司と部下、先輩と後輩のような上下関係がある場合には、なおさらです。

以下のような行動は、傾聴によるオートクラインを妨げるので注意が必要です。

・聞き手が話し過ぎる
・勝手にアドバイスをする

傾聴について詳しく知りたい場合は、下記の記事で詳しく解説しているので、ご覧ください。

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安心して話せる

話し手が自分の考えを話せるのが大事になってきます。上司の顔色をうかがって話していたのでは、自分が納得するオートクラインが起こることはありません。

「自分の考えや本音を話しても大丈夫だ」と感じられる状態、いわゆる心理的安全性が保たれている状態であることが大事です。

・相手の意見や考えを否定する
・「他の人も同じだから」などと適当に慰める

相手の悩みは、自分や他の人と似たものかもしれません。相手の考えは、自分とはまったく違うものかもしれません。しかし、そこでわかったつもりになって話を切り上げたり、否定したりしたのでは、相手が自分の考えを整理し、気付くことはありません。

相手を良い悪いとジャッジするのではなく、その人がいまどう思っているのか、どう感じているのかを受け入れて心を傾けて聴くとよいでしょう。

考えを深める質問をする

自分の考えというのは、案外と整理されていないのものです。考えを深められる効果的な質問をすることによって、考えが整理されたり、盲点に気づけたりします。

5W1Hを活用する

考えを具体的にしていくだけでも、想定から漏れていたことや、目を向けていなかったことに気付くことができます。具体化するのに役立つのが、5W1Hです。

5W1H
いつ、どこで、誰が、なにを、なぜ、どのように(どのくらい)

難しい質問やテクニックは必要ありません。5W1Hで具体的にしていくシンプルな質問からはじめてみてください。

オープンクエスチョンを多くする

オープンクエスチョンというのは、「はい」「いいえ」で答えられない質問です。つまり、自由に回答できる質問です。

逆に、「はい」か「いいえ」で答えるものや、与えられた選択肢から答えるもの(「犬と猫で好きなのはどちらか?」)をクローズドクエスチョンと言います。

クローズドクエスチョンは、選択肢を与えているため、答えや考えを制限します。これだけでは、自分の考えを深めることはできません。また、クローズドクエスチョンを多用すると、誘導するような質問になってしまうことも。

場面によって使い分けることが必要ですが、オープンクエスチョンを多くすることで、相手は考えを深掘りしやすくなります。

呼び水となる話をする

真摯に耳を傾け、相手も真剣に話していても、答えが出てこないこともあります。あるいは、質問をしても「特に不満なことはないです。要望はないです」と返ってきて話が終わってしまうこともあるでしょう。そうしたときには、きっかけとなるような話をするのも一つの手です。

呼び水(よびみず)
1 ポンプの水が出ないとき、またはポンプで揚水するとき、水を導くために外部から入れてポンプ胴内に満たす水。
2 ある事柄をひきおこす、きっかけ。

たとえば、「私は◯◯な点が、~~で良いと思った」と伝えると、「そうなんです!実はこういうことがあって、こだわったポイントなんです」と記憶や言葉がバーッと出てくることもあります。

「特にない」と言う相手には、「実は、他の人からもっと~~してほしいと言われたんだよね」と伝えてみると、「たしかにそれは気になっていました。でも、こういうことの方が気になっています」といった返ってくることもあります。

うまく言葉にできてなかったり、こんなこと言っていいのかなと心配していたりすると、言葉が出てきません。そうしたときに、ちょっとした話をしてみると良いでしょう。

次のようなことが呼び水として使えます。

  • 自分の感じたことや思ったことを伝える
  • 自分はこんな経験をしたと短いストーリーを話す
  • 聞いていて浮かんだアイデアを話す
  • 他の人から言われたことを共有する

このときに大事なのは、あくまでも自分の話はヒントだということです。
相手が考えを深めるきっかけにするためなので、自分の話ばかりになったり、自分の意見やアイデアを押しつけたりしないように気をつけることが大事です。

「自分の感じたことを話していいですか?」と一言断りを入れると、相手も「聞き手の意見」として安心して聞きやすくなります。

まとめ:オートクラインは主体的な行動を引き出す秘訣

オートクラインは、相手の内面から変化を起こすのに欠かせないポイントです。

コーチングを活用したコミュニケーションを意識するのであれば、オートクラインが起きているかどうかが、そのコミュニケーションの成果を判断する大きな材料と言えます。

自分で判断し、行動するようになってほしいと多くの上司が感じています。その変化を待つ必要はありません。
オートクラインを意識して、相手の能力や行動をサポートしてください。

組織にとっても、当人にとっても、価値のある変化が生まれるでしょう。

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