リアプレイザルとは?怒りや不安をコントロールする効果的な方法

怒り、不安、緊張、沈んだ気持ち・・・
こうしたネガティブな気分は、精神的な悩みを生み出すだけではなく、本来の能力を発揮することを妨げ、人間関係に悪影響を及ぼすことがあります。

リアプレイザルは、こうしたネガティブな感情に、専門家の助けや道具なしにすぐに対処できる方法です。非常に手軽ながら、心理学の様々な研究で効果が実証されています。

この記事では、リアプレイザルの効果や方法を解説しています。

目次

リアプレイザル(認知的再評価)とは?

今感じている感情を再評価することで、その感情を自分にとって役立つものに変える方法です。

怒りやストレス、プレッシャーなどに効果的に対応することができます。

Reappraisal:今の感情を再評価し新たな意味づけをする「認知的再評価」
re=再度 appraisal=評価

科学的に効果が示されている心理療法の一つ「認知行動療法」の手法です。非常に簡単ですが、感情のコントロールに効果的だと多くの研究からわかっています。

たとえば、スポーツの本番の前。非常にドキドキして緊張するかもしれません。このドキドキして落ち着かない感覚を「緊張している、不安だ」と捉える人もいます。

このような場面では、「落ち着かないといけない」と考える人もいるでしょう。しかし、そのように思うほど、心臓のドキドキやソワソワした感覚が感じられて、余計に落ち着けなくなってしまいます。

実はこのようなドキドキした感覚を「自分はワクワクしている」「身体はパフォーマンスを発揮するために、心拍数を上げてエンジンをかけているんだ」と肯定的に捉えるだけで前向きになり、実際に良いパフォーマンスを発揮できるのです。

リアプレイザルは、こんな場面で使える!

  • プレゼン前で緊張している
  • 仕事でミスをして落ち込んでいる
  • 上司から厳しいフィードバックを受けた
  • 怒りをぶつけられた

ネガティブな感情が湧いてくる様々な場面で役立ちます。

効果を示したハーバード・ビジネス・スクールの研究結果

ハーバード・ビジネス・スクールのアリソン・W・ブルックス准教授は、300名の学生を対象に実験を行いました。300人の学生に、「採点付きカラオケ」「2分以上の人前でのスピーチ」「数学のテスト」をしてもらう実験です。

この際、緊張への対処法によってグループを分けました。

  • 「落ち着け」と自分に言い聞かせるグループ
  • 「ワクワクしている」と言うグループ(リアプレイザルグループ)

その結果、「ワクワクしている」と言ったグループは、カラオケでは正確性が、スピーチでは説得力や能力、自信、持続性などの評価が上がり、数学のテストでは一番の好成績を残しました。

自分のストレス反応を楽しくなってきたとポジティブに再評価したグループは、17~22%も成績が良くなったのです。

『圧倒的多数の人が、パフォーマンス前の不安に対処するには、落ち着こうとすることが最善の方法であると信じているが、落ち着こうとする人に比べて不安を興奮として再評価する人は、より興奮しパフォーマンスが向上する。』

緊張が生まれるシステムと、リアプレイザルが効果を発揮する理由

私たちの身体は緊張する環境・場面に置かれたとき、それに対処するシステムを持っています。

脳の扁桃体がアラートを出して、内分泌系に刺激を与えます。すると、アドレナリンやコルチゾール、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)などのストレスホルモンが分泌されます。

これらのホルモンはいわば、戦闘状態にするためのスイッチ。心拍数が上がり、なにかあったときにすぐに反応できる態勢を整えます。

この状態は、「興奮状態」であり「緊張状態」でもあります。この両者を区別するのは、解釈に過ぎません。

狩りをしていた時代であれば、獲物を飼ったり、危険に対処するのに「興奮」と「緊張」の区別は、特に必要なかったでしょう。しかし、現代社会においては、「興奮」よりも落ち着いていることの方が重視されます。

おそらく「興奮」として味わうよりも、「緊張」として経験する方が多いと思います。

しかし、あくまで捉え方が違うだけで、「緊張」と「興奮」は同じ身体反応です。そのため、リアプレイザルは緊張に対して、効果を発揮するのです。

リアプレイザル(認知的再評価)の効果・メリット

リアプレイザルは、感情のコントロールを簡易的に行うことができます。

そのため、

  • 怒りの減少
  • ネガティブな感情の減少
  • ポジティブな感情の増加
  • 適応的な生理反応

といった効果があります。

怒りの減少

怒りは自分の大切なものを守るために重要な役割を持っています。しかし、現代では、怒りの感情に任せて行動してしまうと、自分も他人も築けてしまうことが多くあります。その結果、周囲とのコミュニケーションがうまくいかなくなり、信頼を失ったり、人が離れていったりすることも。

しかし、怒りをこらえて押さえつけようとするのは研究によってよくないことがわかってきています。

  • ポジティブな感情を減らす
  • ネガティブな感情を増やす
  • 交感神経の反応が強まり緊張と不安が増す

押さえつけようとすると、かえってストレスになり感情が暴れ出してしまうようです。

また、感情を抑圧しがちな人は悪い印象をもたれやすく、周囲の人の血圧を上げやすいそうです。親密なコミュニケーションを避けるため、深い関係を築くのも苦手です。

つまり、感情に任せて怒りを外にぶつけるのもよくないし、怒りを抑圧するのもよくないということです。

リアプレイザルによって、適切に怒りのコントロールをすることができれば、コミュニケーションや人間関係のトラブルを回避することができます。

怒りと向き合う方法はこちらでもお伝えしています。

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本来の能力(パフォーマンス)を発揮しやすくなる

私たちは緊張によって、本来持っている能力を充分に発揮できなくなってしまいます。

子どもの頃の発表会やスポーツでのチャンスの場面。大人になってからの、面接やプレゼン、営業など、緊張して上手くいかなかった経験があるのではないでしょうか。

ハーバード大学の実験からもわかるように、「緊張している」という認識が変化するだけで、成績は向上します。

能力を発揮できるようになると、良い結果を残しやすくなりますし、自分に自信を持つことにもつながります。

幸福感が高まりやすくなる

  • ネガティブな感情の減少
  • ポジティブな感情の増加

こうした感情の変化自体が、幸福感を高めるのに役立ちます。

また、ネガティブな感情が軽くなることで、今までは躊躇していたことに挑戦したり、やりたいけどできずにいたことに取り組んだりできるようになります。

行動することで新しい体験ができますし、なにより挑戦したことが自分への誇らしさや自信を与えてくれるでしょう。

アイデアが出やすくなる

ユニークな効果をお伝えすると、リアプレイザルを使うことで、良いアイデアが出やすくなる効果が期待できるようです。

サイエンスジャーナリストの鈴木祐氏によると、リアプレイザルによって脳の柔軟性が戻り、新しい考え方ができるようになるのだそうです。

  1. 「怒り」や「悲しみ」などのネガティブな感情がわきあがる。
  2. ネガティブな感情のせいで、思考がガチガチに固まってしまう(「あいつが悪いんだ!」とか「こんな辛いのは自分だけだ!」みたいな)。
  3. しかし、ここでリアプレイザルを使い、いまのネガティブな感情をとらえなおしてみる。
  4. 目の前の状態を新たに解釈することで、既存の思い込みから抜け出すことが可能になる。ついでに、ネガティブな感情がしずまることで、落ち着いて物事を考えられるようになる。
最強ストレス対策テク「リアプレイザル」で良いアイデアがガンガンに出るぞ!

リアプレイザルは本来持っている創造性を発揮させることにつながります。

また、「自分には創造性なんてない」と思う人にも、オススメです。

なぜなら、リアプレイザルと創造性について調べた研究チームは「クリエイティビティは誰にとっても強化できるスキルと言える。」と伝えています。

さらに、研究の中で、「創造性テストで高い点数を取った人ほど、日常生活でリアプレイザルを使う回数が多い傾向があった」ということがわかっています。

つまり、普段からリアプレイザルを活用することで、創造性を高めることにもつながるし、その創造性を発揮することにも役立つようです。

リアプレイザルのやり方

やり方は非常に簡単で、ネガティブな感情が湧いてきたら、出来事に対する見方を変えてみるだけ。

たとえば、

  • 上司に理不尽に怒られた(この上司はクソだ)→「上司はなにかイヤなことがあったのかもしれない」
  • 仕事でミスをした(だから、自分はダメなやつだ)→ミスが起きやすい状況・パターンを学べた
  • プレゼン間近で緊張してきた(失敗したらどうしよう)→興奮してきた、ワクワクしてきた、武者震いしてきた

子ども騙しのように思うかもしれませんが、実際にやってみると気持ちに変化が起こります。

リアプレイザルのポイント

内容が正しいかどうかは気にしない

たとえば、上司に理不尽に怒られたことに対して、「上司はなにかイヤなことがあったのかもしれない」と思うことで、感情に変化が生まれます。

このときに、「本当に嫌なことがあったのか?」と事実かどうか確認する必要はありません。

この方法で大事なのは、出来事の捉え方が変わることで、感情が変わることです。そして、それによって、行動にも変化を起こせることです。

仮に本当に上司がイヤな人間で、自分が嫌いだから理不尽に怒られたのだとしても、リアプレイザルによって気持ちが前向きになり仕事に集中できたのなら、良いと言えるでしょう。

逆に、本当はいい人だけど嫌なことがあって自分に当たってしまったのだとしても、それをネガティブに受け止めたままでは、相手との関係に悪影響が出たり、仕事に集中できなくなってしまったりするでしょう。

自分のために、リアプレイザルを楽しんでみてください。

身体反応は似たような状態に再評価する

緊張が興奮(ワクワク)と再評価できるのは、その身体反応が同じだからです。心臓がドキドキして、心拍数が上がり、ソワソワするのを感じる。

一方で、緊張を冷静さと再評価するのは、難しいでしょう。

これは身体反応が真逆だからです。

身体反応に関して再評価が難しい場合には、その感情をもたらした出来事を再評価するとよいでしょう。

たとえば、意見が対立して相手も自分も怒っているようなときには、「怒っているということは、自分も相手も大事だと思っていることがあるんだ。」「意見の対立はお互いに理解を深めるいい機会だ」と捉えられると、気持ちに変化が起こるでしょう。

リアプレイザルは捉え方の筋トレのようなもの

慣れていない人にとって、別の視点で考えてみるのは少し難しく感じるかもしれません。

しかし、リアプレイザルは筋トレのようなものです。日常的に使うことで、だんだんと様々な場面で活用することができます。

そもそも、ストレスやネガティブな感情に対して「リアプレイザルしてみよう」と思えるだけで、イヤな感情から一歩距離を置くことができます。それだけでも、少し気分は軽くなります。

その上で、違った視点で見ることができれば、さらに感じ方も変わってきます。

正解はありません。
楽しんで取り組んでみるとよいでしょう。

まとめ:リアプレイザルは手軽に前向きに進める方法

リアプレイザルは、特別な知識やスキルがなくても、ネガティブな感情を前向きな気持ちに変えてくれる方法です。

それにより、本来の能力を充分に発揮できるようになったり、どんどん行動できるようになったり、人間関係に良い影響を与えたりと優れた効果を発揮してくれます。

日常的に使うことで、捉え方を変えることが自然とできるようになっていきますので、気軽な気持ちで活用してみてください。

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