アンガーマネジメントの意味とは?実際の効果や6つの具体的な方法をご紹介
「アンガーマネジメントという言葉を聞いたことがあるけど、具体的な意味について知りたい。」
「アンガーマネジメントには、どの様な効果がある?」
「アンガーマネジメントの具体的な方法がわからない。」
この様な悩みをお持ちの方もいらっしゃると思います。
変化の激しい競争社会では、多くの人が大きなストレスやプレッシャーにさらされ、アンガーマネジメントを難しくしています。
今回は、アンガーマネジメントとは何か、具体的な方法と必要性についてまとめて解説しています。怒りを適切にコントロールし、仕事を円滑に進めるために、ぜひ本記事をお役立てください。
アンガーマネジメントとは何?意味は?
アンガーマネジメントとは、怒りの感情をコントロールするスキルを指します。単に怒りを抑えて我慢するのではなく、上手に付き合っていく方法です。
そもそも、怒りの感情そのものは悪いものではありません。
しかし、怒りによって周囲の人に八つ当たりをしたり、威圧的な態度を取ったり、物を壊したりしてしまい、職場の雰囲気や人間関係を悪くすることが、本人にとっても周囲にとっても問題となります。
頭では良くないとわかっていたとしても、感情をコントロールできないことや、その場は我慢できても別の時に爆発してしまうこともあります。アンガーマネジメントのスキルを身につけることで、本人にとっても周囲にとっても心地よいコミュニケーションを実現することにつながります。
アンガーマネジメントの背景
元々は、1970年代にアメリカで生まれたとされています。カウンセラーによるメンタルトレーニングやDV(ドメスティック・バイオレンス)、人種差別・性差別、軽犯罪者に対する矯正プログとして活用されてきました。
現在では、企業研修やカウンセリング、メンタルトレーニングなど、幅広い分野で活用されています。
そもそも怒りの感情とは?
「怒り」の感情自体は、悪いものでもなんでもありません。自然な感情であり、危険から身を守るための本能です。しかし、怒りの種類や怒り方によって、問題が起こります。
必要な怒り
大切なものを守るための怒りは必要な怒りと言えます。自分や周囲の人の身体的・精神的な安全を守るため。内容や状況にもよりますが、ルールを守ってもらうため。
自分の意見や感情をあまり主張できないタイプは、他人から軽んじられたり、仕事を押し付けられたりすることもあるでしょう。そうしたときに、適切に怒ることは対等な人間関係を築く上で必要なことです。
危険な怒り
一方で、すぐに怒ったりイライラしたり、暴力を振るうなど危険な怒りも存在します。こうした怒りは自分も周囲も傷つけることになるため、上手な怒り方を身に着けた方がよいと言えます。
たとえば、危険な怒りの要素としては次のようなものが挙げられます。
- ちょっとしたことでも、すぐに激昂する
- 怒りが持続する、長続きしている
- 怒りの頻度が高い。よくイライラしている
- 攻撃的:自分や他人を責める、モノに当たる
怒りのメカニズム
アンガーマネジメントを身につける上で、なぜ怒りの感情が湧いてくるのかという、怒りのメカニズムを知ることが役立ちます。アンガーマネジメントはただ怒りを抑圧するのではなく、自分の感情を相手にうまく伝えながら適切にコミュニケーションを取るためのスキルだからです。
アンガーマネジメントにおける怒りのメカニズムは、第一次感情と第二次感情によって説明されています。
第一次感情(基本感情)
第一次感情は、根本的な感情であり、まず最初に感じる感情のことです。喜び、悲しみなど。
アンガーマネジメントにおいては、日々感じるネガティブな感情のことを指すことが多いようです。不安や恐怖、悲しみ、さみしさ、疲れ、つらさ、孤独、焦りなどの感情です。
こうした感情は普通のことであり、どんな感情でも問題があるわけではありません。しかし、ネガティブな感情が重なると、ストレスとして蓄積されていきます。
第二次感情
第一次感情が溜まり続け、許容範囲を超えると怒りとして現れます。これが第二次感情です。つまり、直接怒りが湧いてくるのではなく、第一次感情が裏に隠れているのです。
たとえば、部下が仕事でミスをして、思わず怒鳴ってしまった場面。
部下のミスが怒りの原因のように思いますが、あくまできっかけに過ぎません。その裏には、「他者に迷惑をかけるかもしれない心配」「自分が叱責を受けるかもしれない不安」「納期に遅れるかもしれない焦り」「普段から抱えている仕事に対するプレッシャー」こうしたネガティブな感情が隠れています。
上手に怒りと付き合うには、怒りの裏に隠れた気持ちを相手に伝えたり、第一次感情を解消するための行動を取れたりすることが欠かせません。そのためには、まず第一次感情に気づくことが重要です。
怒りのデメリット
怒りの感情そのものは問題ではありませんが、多くの人は怒り方や扱い方に問題があります。
- 怒っている人は、自分の怒りを正しいものだと感じていることがよくある。しかし、相手は必ずしもそうは思っていない。この認識の違いは、問題を引き起こす
- 怒りは、本当の問題から目をそらすだけであることがよくある
- 怒りは問題を解決せず、さらなる問題を引き起こす可能性がある
- 肉体的にも精神的にも健康に悪い
- 怒りでどうにかしようとする癖があると、パワハラや暴力などの社会的な問題を引き起こす可能性がある
怒りを他人にぶつければ、周囲を傷つけストレスを与えてしまいます。その結果、自分の信頼を失うこととなり、職場での人間関係を悪くさせてしまうでしょう。また、怒りをコントロールできないことに対して、自責の念を強く感じることもあるでしょう。その場合には、怒りが自分を傷つけることとなります。
不適切な怒りの表現方法
怒りを爆発させる
怒りをコントロールできずに、激怒して爆発させることは自分にも周りにも害を与える危険性があります。相手を罵倒したり、暴力を振るったり、モノに当たったりしてしまうことも。
怒りを抑圧する
怒りを「悪い」感情だと考えて、抑圧してしまう人もいます。その場合は、すぐに問題は起こりませんが、ストレスとなって鬱や不安になってしまうこともしばしば。こうした溜め込んだ怒りは、なにかのきっかけで爆発したり、無関係の人やモノにぶつけるなどの問題を引き起こすこともあります。
職場でアンガーマネジメントが必要な理由とは?
職場でアンガーマネジメントが必要なのは、怒りが人に悪影響を与えるからです。
人は怒りを感じると、普段通りのパフォーマンスが発揮できなくなったり、怒ってしまう自分にイライラしたり、自己嫌悪に陥って落ち込んだりするなど、自分自身の心身の健康に悪影響を及ぼします。
怒りをあらわにする姿を見た周囲の人が、不快に感じたり、ストレスを感じたりすることもあります。また、他の人のやる気を削いだり、落胆させたりするなどの悪影響もあり、後輩や部下に怒りをぶつけた場合はパワハラとみなされることもあります。
相手に怒りをぶつけることは、解決すべき根本的な問題を解決しないばかりか、新たな問題を引き起こす可能性だってあるのです。怒りは、コミュニケーションを困難にし、職場の生産性を低下させることもありますので、職場の全員がアンガーマネジメントができる状態にあることが望ましいです。
アンガーマネジメントによって、ハラスメントを防止し、円滑なコミュニケーションによって仕事を円滑に進めることができます。
アンガーマネジメントが注目される背景
1.価値観やライフスタイルの多様化
日本でも多様な価値観やライフスタイルが認められるようになってきました。残業や働き方、仕事に対して求めるもののなどの変化。在宅ワークが認められる。外国人と仕事をすることも増えています。
しかし、自分の価値観以外を受け入れられない人も多くいます。これまで当たり前と思ってきたことや理不尽だと思いつつも耐えてきたことなどが変わってくると、反発する気持ちが湧いてくる方もいます。
世代や文化などによって、自分とは異なる価値観を持つ人たちと仕事をする機会が増えたため、怒りや混乱を感じやすい状況が起きています。
2.ハラスメントに厳しくなってきている
社会的にも、個々人としても、パワハラやセクハラといったハラスメントに対して厳しい目を向けるようになっています。教育として行った行為が、部下や周りからするとパワハラとして捉えられることもあります。特に、自分が身体的・精神的な暴力を伴うような指導を経験していると、それが当たり前のようになってしまいます。自分がパワハラ・セクハラだと捉える行為と、周囲がパワハラだと捉える行為は違うと認識する必要があります。
一方で、この問題が難しいのは、ハラスメント行為の線引にはあいまいなところがあることです。場合によっては、部下の方が過剰に反応している、もしくは部下という立場を悪用していることもありえます。こうした線引の難しさも、上司や管理者の困惑を招いていると言えるでしょう。
3.怒り方を学んでいる人は少ない
怒りは人間にとって、当たり前の感情です。しかし、そのまま怒りを爆発させるのも、ただ怒りを抑圧するのも適切な方法とは言えません。
それにも関わらず、ほとんどの人は怒りに対してどう対応すればいいのか、向き合えばいいのかを知らずにいます。コミュニケーションスキルの一つとしても、個人や組織全体の生産性を高める上でも、取り組むべきスキルだと言えます。
アンガーマネジメントを特に身につけておきたい人の特徴
怒りやすい人、怒りが強い人
普段からすぐに怒りやすい人や、その怒りが強い人です。
- ちょっとしたことでも、すぐに怒る
- 怒っている時間が長い
怒っていると集中力や生産性が下がることになりますし、周囲としてもコミュニケーションが取りにくくなるなど、怒っている人にも周囲にも悪影響があります。そのため、怒りやすい人がアンガーマネジメントを学ぶことで、良い影響を得られるでしょう。
周りに合わせすぎて、ストレスをためやすい人
意外かもしれませんが、自分を抑圧して協調的すぎるタイプにもオススメです。
協調的なことは良いことだとされています。しかし、協調性が強い人は、周りとうまく付き合うために自分の感情や意見を抑えてしまう傾向があります。すると、ストレスや怒り、悲しさなどをため込んでしまって、なにかのきっかけで怒りを爆発させたり、抑うつ的になってしまったりするなど、大きなトラブルにつながる可能性があります。
適切に感情と付き合っていくために、アンガーマネジメントやアサーティブコミュニケーションなどを身につけるのをオススメします。
リーダーや管理職
部下やメンバーをマネジメントする立場にある方にも、アンガーマネジメントはオススメです。
上司の存在が、部下のモチベーションや能力を大きく左右します。部下の価値観や感情を理解し適切に付き合っていくことで、チームとしての生産性を高めることにつながります。
また、ハラスメント行為を防止するためにも、リーダー層や管理職が身につけておくとよいでしょう。
アンガーマネジメントのメリット
アンガーマネジメントにはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここから詳しく解説します。
怒りに振り回されなくなる
- ちょっとしたことでは怒らなくなる
- 怒りに任せた発言をしなくなる
- イライラを相手にぶつけなくてよくなる
怒りの感情と上手に付き合っていけるようになるため、上記のような怒りから生まれるトラブルが少なくなります。
良好な人間関係を築ける
怒りをコントロールできるようになると、対人関係におけるストレスが軽減されます。
怒りを溜め込んだり発散したりすると、自分自身が怒りのストレスにさらされ、怒られている人もストレスにさらされます。不機嫌な人やイライラしている人がいると、周囲もストレスを感じるものです。ピリピリとした雰囲気がなくなるため、自分も周囲も人間関係のストレスが軽減されます。風通しの良い快適な職場環境にもつながります。
ハラスメント行為の防止につながる
怒りやストレスの扱い方が上手になります。そのため、高圧的な態度や罵倒といったパワハラなどのハラスメント行為を防止することにつながります。
自己分析(自己理解)ができるようになる
アンガーマネジメントによって、どのような場面で怒りを感じやすいのか、どんな性格特性なのかなど自分を知ることにつながります。正義感が強かったり、完璧主義な面があったり、自分の気持ちを素直に表現したいタイプだったりします。自分を客観的に見る習慣を身につければ、怒りだけでなく、さまざまな場面で自分がどのような行動をとるかがわかるようになります。
また、怒りやすい人は元々の第一次感情に気付かずに怒っていることがほとんどなので、アンガーマネジメントを通して、本当の気持ちを伝えて、より良い関係を築いていくことにも役立ちます。
仕事の生産性がアップする
イライラしている状態で、仕事に集中できる人はほとんどいないでしょう。余計なことを考えたり、やるべきことが後回しになったりと、怒りやすい人は本来の能力を発揮できずにいます。これは怒りを抑圧している人も同じです。ストレスを溜め込むことになり、やはり本来の力を発揮できません。そのため、上手に怒りと向き合うことができるようになることで、仕事の生産性も高まります。
また、組織の生産性は、個々人の足し算ではなく、人間関係や職場環境などにも影響を受けています。コミュニケーションが円滑にいかないことと、仕事の生産性は低下します。イライラしている人や怒りやすい人が少なくなることで、心理的安全性が高まり組織の生産性も高まるでしょう。
より幅広い思考ができる様になる
他者の違いを受け入れられるかどうかによって、怒りやすさや度合いは大きく変化します。アンガーマネジメントを通じて、より柔軟に物事を捉えて、広い視野で考えることができるようになるでしょう。
教育の場面でも役立つ
自分の怒りに対して使えるのはもちろん、部下やメンバー、同僚などの怒りに対応するのにも役立ちます。周囲の人も、怒りたくて怒っているわけではありませんから、適切に対処できるように働きかけられれば、感謝や信頼を得ることとなります。
自分の怒りのタイプを知る
自分がどのようなときに、どんなことに怒りを感じやすいかを把握することで、怒りに対処しやすくなります。
日本アンガーマネジメント協会の「アンガーマネジメント診断」は、怒りのタイプを知るのに役立ちます。
アンガーマネジメント診断の質問
Q1~12までの質問に対して次の項目から最もあてはまる回答を選び、それぞれ点数をつける
全くそう思う……6点
そう思う……5点
どちらかというとそう思う……4点
どちらかというとそう思わない……3点
そう思わない……2点
全くそう思わない……1点
- Q1.世の中には尊重すべき規律があり、人はそれに従うべきだ
- Q2.物事は納得いくまでつきつめたいと思う
- Q3.私は自分に自信がある
- Q4.リーダー的な役割が自分の性に合っていると思う
- Q5.人の気持ちを間違って理解していたということがよくある
- Q6.簡単には解決できない強いコンプレックスがある
- Q7.たとえ小さな不正でも見逃されるべきではないと思う
- Q8.好き嫌いがはっきりしているほうだ
- Q9.自分はもっと評価されて良いと思う
- Q10.言いたいことははっきりと主張すべきだ
- Q11.自分で決めたルールを大事にしている
- Q12.人の言うことをそのまま素直に聞くのが苦手だ
次の6つの組み合わせで点数を合計する
- Q1+Q7
- Q2+Q8
- Q3+Q9
- Q4+Q10
- Q5+Q11
- Q6+Q12
最も点数の高い項目をチェックする
- Q1+Q7の合計が一番高い=公明正大タイプ
- Q2+Q8の合計が一番高い=博学多才タイプ
- Q3+Q9の合計が一番高い=威風堂々タイプ
- Q4+Q10の合計が一番高い=外柔内剛タイプ
- Q5+Q11の合計が一番高い=用心堅固タイプ
- Q6+Q12の合計が一番高い=天真爛漫タイプ
※同点の項目が2つ以上ある場合は、混合タイプの可能性がある
アンガーマネジメント診断の6タイプ
それぞれのタイプには、性格的な特徴やイライラしやすい場面、他人と衝突しやすい出来事などがあります。自分のタイプを知ることで、怒りやストレスに飲み込まれないよう気をつけていきましょう。
また、他人のタイプに当たりをつけることで、自分とは違ったイライラやストレスを感じやすい状況を理解するのにも役立ちます。
公明正大タイプ
一言で表すと、正義感の強いタイプです。ルールや規律を守ることを重視します。
そのため、ルールやマナーを守ることを他人にも強要したり、必要以上に仕事を抱え込んだりするため、気難しく受け取られてしまいがち。「自分は正しい」「間違っていない」と考える傾向にあります。
公明正大タイプがイライラを軽減するには、「絶対的な正しさはない」という心構えを持つことです。寛容さを持つことや、他者の価値観・考え方を尊重することで、周囲ともうまく付き合っていけるでしょう。
博学多才タイプ
どんなことにも白黒つけたがる、完璧主義者タイプ。向上心があり、合理的。
自分にも他人にも厳しく、優柔不断な態度を嫌う傾向にあります。いい悪い、好き嫌いなど、グレーゾーンのない極端な判断をしがちです。
博学多才タイプがイライラを減らすには、多面的に物事を見ることです。どのような考え方・行動にも、ポジティブな側面とネガティブな側面があります。あるいは、短期的・長期的、自分・相手・第三者といった様々な軸で考えることで、柔軟で寛容な考え方を身につけることができるでしょう。
威風堂々タイプ
自信がありプライドの高いリーダータイプ。堂々としていて行動力もあるので、自然とリーダーとして周りからも認められやすいです。
自信過剰や自己中心的になりがちで、見下した態度を取ってしまうことも。プライドの高さ故に、評価を必要以上に気にしたり、人から意見されることや邪険に扱われることで傷つきやすい面も持っています。思い通りにならないことが、ストレスに感じやすいでしょう。
威風堂々タイプがイライラを軽減するには、謙虚さを忘れないこと。言い換えると、他人が果たしてくれている役割を理解することです。リーダーとして華々しい立場は、それを支える役割の人がいるからこそ成り立つものです。他人の意見も聞き入れることで、能力をより発揮できるでしょう。
外柔内剛タイプ
穏やかだが、内には堅い意思を持っている頑固なタイプ。物腰柔らかな雰囲気のある一方で、実は自分のルールを大事にしています。
そのため、自分が決めたことやルールは誰にも譲らない傾向があります。自分のルールやペースが守れないことが、ストレスになりやすいです。別の手順や方法を強要されることやルーティンから外れること、気に入らないことをやらないといけないときなどに、強いフラストレーションを感じます。信念の強さ故に、思い込みの激しいタイプともされています。
外柔内剛タイプがイライラを軽減するには、自分ルールに執着しないこと。自分にとっては当たり前だったり重要だったりするルールだとしても、他の人にとってはそうではないことが多いにあります。もっとよい方法があるかもしれないと柔軟さを意識してみることです。また、完全には自分ルールの通りに行かないとしても、一部分だけでも決めた通りにできることがないか目を向けてみるのもよいでしょう。
用心堅固タイプ
落ち着いていて慎重、物事をよく見て判断するタイプ。気が利き、じっくり考えて判断します。
一方で、人に心を開くのが苦手なので、深い人間関係を築くのが苦手です。他人と距離を置くことが多く、職場で怒ることは少ないでしょう。その代わりに、身近な人には怒ってしまう方もいます。また、コミュニケーション不足によって、周りから誤解されたり、自分の思い込みで相手にレッテルを貼ったりすることもあります。劣等感や不安感を持ちやすい傾向にあります。
用心堅固タイプがイライラを軽減するには、レッテル貼りをやめて、他人をよく見ることです。うまくコミュニケーションが取れなくても、相手が悪いのではなく、状況や伝え方がよくなかっただけかもしれません。人間関係ではお互いを知ることが大切です。
天真爛漫タイプ
自分の思ったこと感じたことを、思ったように発言して行動するタイプ。自分を素直に表現して、行動していきます。
思ったことを口にするので、場をわきまえない・空気を読まないと思われることも。後先考えない行動力は、トラブルを引き起こしたり、強引だと思われたりすることもあります。また、自分の意見が言えないような状況ではストレスを感じます。
天真爛漫タイプがイライラを軽減するには、慎重さや周りをよく見ることを意識することです。多くの物事は自分一人で動かせるわけではなく、協力して取り組むもの。相手の協力を引き出すには、相手の意見を聞き入れたり、表情や態度から感情を気にかけたりすること。重要だと思われたいのは、他の人も同じなのです。
アンガーマネジメントの5つの具体的な方法
アンガーマネジメントは、カッとなる怒りの衝動をコントロールする方法と、怒りを生み出している思考をコントロールする方法に分かれます。ここでは、すぐに取り組める具体的な方法を紹介します。
6秒ルール
怒りを感じてから冷静に考えられるようになるまで「6秒」かかると言われています。怒りのピークがすぎれば、少し落ち着いて発言や行動ができるようになってきます。具体的な方法として、怒りを感じたら6秒数えることです。
より意識をそらすために、「数が大きい方から小さい方へ数える」方法も有効です。たとえば、「100、99、98、、、」という具合です。
もう少し頭を使うように「100から3ずつ引いていく」方法などもあります。具体的には、「100、97、94、91、88、、、」と数えていきます。
深呼吸をする
怒りを感じたら、深呼吸をしましょう。深呼吸をすることで、副交感神経が優位になり、冷静さと落ち着きを取り戻すことができます。特に吸うことよりも、長く吐くことを意識してみてください。たとえば、4~5秒かけて息を吸い、10秒かけて息を吐きましょう。
ゆっくりと深呼吸をすれば、自然と6秒ルールを守ることもできます。
怒りの思考を止めて、怒りの原因から距離を取る
怒りをはじめとしたネガティブな感情を感じると、様々な考えが浮かんできます。ここで浮かんでくる考えは、ネガティブ感情の影響を受けた歪んだ思考であることがよくあります。
「相手は自分に悪意がある」
「こっちのことをなにも考えていない」
「自分はどうでもいい存在だ」
「自分が頑張っても意味がない。無駄だ」
こうした状態でいくら考えても、ネガティブな感情がどんどん膨らんでいくだけ。
そこで、できるなら怒りの原因から距離を取り、思考を止めてみることも効果的です。
例えば、怒りのこもった文書やメールを見たとき、一時的にそのファイルや画面全体を閉じます。席を立って、手洗いに行く。手相やしわ、爪の形など自分の手を1分ほどよく観察してみる。
ネガティブな感情や怒りの思考を膨らませないことで、落ち着いて対応できるようになります。
怒りを数値化してみる
今どのくらい怒りを感じているかに、点数をつける方法です。シンプルなものとしては、0(平常心)~10(人生最大の怒り)の中で何点かつけてみることです。
自分の怒りを数値化することによって、客観的に捉えることができます。すると、冷静に対応することができるようになるでしょう。「どうしたいのか、どうしてほしいのか?」といったことにも目を向けると、より良い対応もできるでしょう。
アンガーログで怒りのパターンを見つける
アンガーログとは、その名の通り、怒りの記録です。
- なにに怒っているのか?
- なぜ怒っているのか?
- 具体的になにがイヤだったのか?
こうした記録を取り続けることで、自分がどんなときに怒りやすいのかといった、怒りのパターンを把握することができます。そうすることで、怒りの原因を作らないようにしたり、事前に対処法を決めておいたりと対策をすることできます。
怒りやすさを変える取り組み・スキル
他にも、怒りやすい状態を変化させる取り組みやスキルがあります。
- アサーティブ・コミュニケーションを学ぶ
- コーチングを学ぶ
- 瞑想やマインドフルネスなどを習慣化する
- 定期的に運動する
- 睡眠をしっかり取る
当協会で教えているコーチングの技術を身に着けたことで、自分と部下の怒りにうまく対応することができた事例を紹介します。
仕事であることがあったのでシェアさせてください!
先日、部下(年上)の方がイライラしながら仕事をしていました。話を聞いてみると私への不満や仕事の効率の悪さなど怒りにまかせながら怒涛の口撃……(前までの私だったら逆ギレしてしまい余計相手をイライラさせてしまっていたと思います。)
塾で学んだ自分の感情(口撃されカッとしてる自分)を認識しながら落ち着くことができました。
自分の非を認め、謝りました。
(忙しいから対応できないという思い込みもありました……)
すると相手の怒りの感情がしずまり優しい口調に戻りました。
そのあとは私の今思ってる事を伝え、相手の今思ってる事を聴き、改善策がハッキリと明確にできることができました!
仕事帰りには『いろいろ言えてスッキリしたありがとう!』と感謝の言葉も受け取れました!!
コーチングについては下記の記事で、詳しく解説しています。
アンガーマネジメントに基づいた教え方・叱り方の8つのコツ
アンガーマネジメントに基づいた教え方・叱り方のコツとは?その方法とコツを学び、ビジネスシーンに活かしていきましょう。
①信頼関係が大切
ビジネスでは、厳しいことを言わなければならない場面が多々あります。そのような場面で、適切な指導をするためには、日頃から叱る相手との信頼関係が大切です。
最低限の信頼関係がなければ、叱られた側は「自分を否定された」と感じるだけかもしれません。そうならないためには、意識的にコミュニケーションを増加させることが大切です。
逆に、信頼できる上司からの言葉であれば、相手も耳を傾けやすいでしょう。
②人前で叱らない
人前で叱ることは、たとえそれが正しい言葉であったとしても、相手を傷つけてしまうことがあります。そのような事態を避けるためにも、叱るときは、1対1の話し合いの場を設けることが望ましいです。
③相手を叱る目的意識を持つ
相手のために叱るという目的意識を持つことで、適切な指導がしやすくなります。
④程度を表す言葉は控える
叱るときは、程度を表す言葉はできるだけ控えたほうが良いです。人によって程度の捉え方は異なりますので、具体的にどの程度を求めているのかは、できるだけ数値で表現した方が良いでしょう。
⑤相手の人格を否定しないこと
指示すべきは、相手の「行動」であって、人格や性格ではないことを肝に銘じましょう。相手の人格を否定することはパワハラにつながりかねません。
⑥感情に流されないこと
例えば、「どうしていつもそんなに心配させるんだ」といった感情的な発言は、控えることも大切です。過度に感情的になることは、何の解決にもならないばかりか、あなた自身の評価を下げることになります。
⑦決めつけない
例えば、「状況を甘く見ていたに違いない」などと決めつけるような発言はしないことが大事です。相手に不信感を与え、相手との信頼関係にも影響しかねません。
⑧表情や伝え方にも気を配る
どうしても叱らないといけない場合は、「あなたの意見はある意味正しい」「あなたの判断を尊重する」などの言葉で相手を認めつつ、改善してほしい点を伝えましょう。また、「現状に満足しているが、もっと良くしたいので協力してほしい」と言うのも効果的です。
ただし、厳しい指摘が必要な場合に関しては、ためらうと伝わりにくくなりますので、はっきりと指摘することが大切です。
アンガーマネジメントを研修で行う効果
ハラスメントの予防
パワハラやセクハラといったハラスメント行為は、関わる人を全て不幸にします。
パワハラを受けた側は、身体的・精神的なストレスを抱えることとなります。ひどい場合には、うつ病の発症などの大きな問題につながることも。
(意図的ではなかったとしても)パワハラを行った側は、信頼を失い、評価を下げることとなります。
また、ハラスメント行為がよくある会社と認識されると、離職率の増加や採用難、他社からの信頼低下といった問題につながりかねません。パワハラやいじめなどのはSNSや発信媒体の発展によって簡単に広がるようになりました。発信することが簡単になりましたし、こうした問題は容易に拡散されて社会に認識されてしまいます。
多くの問題を引き起こすハラスメント行為を予防するのに、役立つでしょう。
人間関係の改善と生産性の向上
すぐに怒鳴ったり、怒ったりすることが人間関係に悪影響を及ぼすのはわかりやすいです。それだけではなく、こうした人はすぐにイライラしたり不機嫌になったりと、職場の雰囲気を悪くすることがよくあります。そうすると、直接怒鳴られていないとしても萎縮する人、気持ちが落ち込む人などが出てくるので、やはり悪影響があります。
アンガーマネジメントによって適切に怒りと向き合えるようになることで、本人の人間関係もより円滑なものとなりますし、周囲にとっても雰囲気のよい働きやすい職場となっていきます。
また、コミュニケーションが円滑で雰囲気が改善されることによって、仕事へのモチベーションアップや集中力アップなど、組織としても生産性向上に役立ちます。
まとめ
今回は、アンガーマネジメントの基本的な考え方、効果や具体的な実践方法をご紹介しました。
アンガーマネジメントは、企業経営に欠かせない考え方であり、生産性やチームワークにも影響します。また、アンガーマネジメントを実践することは、職場の良好な人間関係の構築・維持だけでなく、自分自身のメンタルヘルスを守ることにもつながります。
なお、アンガーマネジメントを実践する一つの方法として、外部のサービスの力を借りるという方法があります。