自律型組織とは?従来との違いからメリット・デメリットなどを細かく解説

近年、ティール組織やホラクラシー組織などの「自律型組織」が注目を集めています。この記事では、

  • 自律型組織とはどういった組織か?
  • 従来の組織との違いは?
  • 自律型組織のメリット・デメリット
  • 代表的な事例
  • 実現に向けたポイント

などを紹介しています。より良い組織やチームを実現する一助として、自律型組織への理解を深める役に立ててください。

目次

自律型組織とは?

自律型組織とは、従来の階層型組織とは異なり、権力や裁量が分散している組織形態のことです。

従来の組織では上司が指示を出し、部下がそれに従って業務を行っていましたが、自律型組織では各々のメンバーが自ら判断し、責任を持って業務を進めます。単に自由に行動するだけではなく、明確なルールやビジョン(目標や方針)のもとで、最適な意思決定や行動が求められます。

自律型組織と従来型組織の違い

自律型組織と従来型組織は、その組織の運営や意思決定の仕組みにおいて大きな違いがあります。

これまでの組織構造は、ピラミッド型の組織をしてきました。トップが意思決定を行い、管理職が部下に指示を出し、それに従い業務を進める形式です。一方、自律型組織では、個々のメンバーやチームの裁量で業務を進めることが求められます。上司の指示に頼らず、自ら考え、判断し、行動することが重要です。

自律型組織従来型(ピラミッド型)組織
形態のイメージ
構造自律型・フラット型トップダウン型
権限自律・分散トップに近づくほど強まる
マネジメント個人・チームの能力を引き出す
ピープルマネジメント
プロセスや数字の管理を行う
ワークマネジメント
意思決定トップが行う各個人・チームが行う
仕事のスタイルトップによる計画を重視現場の実行・改善を重視

自律型組織が注目される背景

自律型組織が注目される背景は、従来の階層型組織が抱える課題や急速に変化するビジネス環境に対応するためです。従来型組織では、上司の指示待ちや決裁の遅さなどが問題とされてきました。しかし、自律型組織では個々のメンバーが主体的に行動し、自ら意思決定を行うことが求められます。そのため、迅速に意思決定と柔軟な対応を行うことができるようになります。

また、近年は人材を資源(コスト)ではなく、資本(リソース)と捉える「人的資本」が重視されるようになってきています。そのためには、個人の能力を最大限引き出すとともにやりがいや自己実現などの精神的な充足感を得られることも大事です。自律型組織においては、リモートワークや働き方など柔軟に選択しながら、会社に貢献することが可能です。

これらの背景から、自律型組織は従来の組織形態と比べて柔軟性や創造性が高く、変化に対応しやすいとされています。そのため、多くの企業や組織が自律型組織への転換を模索しているのです。

自律と自立の違い

自律型組織への理解を深める上で、言葉の違いを知ることも役に立つでしょう。「自律」と「自立」は似たような意味合いを持ちますが、微妙な違いがあります。

自律:他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)

自立:他への従属から離れて独り立ちすること。他からの支配や助力を受けずに、存在すること。
出典:デジタル大辞泉(小学館)

自律に求められるのは、主体性を発揮することです。たとえば、どのような組織であれ一人で定められた仕事が十分にできるのであれば、自立していると言えます。しかし、それが決められた業務をこなしているだけでは「自律」しているとは呼べません。

自律型組織においては、組織のミッションやビジョンに基づいて判断を行います。現在の状況や課題からビジョンを実現するのに相応しいと判断する行動を行う。具体的な指示やマニュアルに沿った行動を十分にできる以上に、主体的に行動・改善することが求められる組織形態です。

自律型組織の種類

自律型組織にはいくつかの種類があります。その中でも代表的なものをいくつか紹介します。

アジャイル組織

アジャイル(Agile)」とは「機敏な」「敏捷な」といった意味を持つ言葉です。元々は、ソフトウェア開発において開発工程を短期間で繰り返す手法でした。これを組織や経営に取り入れたものです。

事前の計画を重視するのではなく、実行しながら改善を行うことを重視しています。ピラミッド型の組織では、トップの指示を計画通りに行うことが求められます。アジャイル型の組織では、個人やチームが実行と改善を高速で繰り返します。これにより、顧客ニーズの変化などにもすばやく対応することができます。

上司やマネージャーは、部下の働き方や職場環境を整えるピープルマネジメントの役割が求められます。

ティール組織

「ティール(Teal)」は、青緑を意味する言葉です。フレデリック・ラルー氏の著書『Reinventing Organizations』(邦訳版『ティール組織』)にて提唱されました。組織の進化過程を5段階に分け、最も進化した段階を「ティール」としています。

ティール組織では、上司や部下の関係、マネージャーなどの役職が存在しない、フラットな組織が特徴です。

段階:名称特徴
5:Teal(ティール・進化型)役職のない対等(フラット)な組織
権力を持つリーダー、つまりマネージャーや管理職がおらず、メンバーが意思決定を行います。組織毎の独自のルールやビジョンに基づいて、メンバー一人ひとりが主体的に行動していく組織です
4:Green(グリーン・多元型)メンバーが主体性を発揮できる組織
メンバー個人が主体性を発揮して、アイデア、行動を選択しやすい組織です。階層構造はあるものの、ボトムアップ式で意思決定が進みます。リーダーの役割は、メンバーが能力をより発揮できるように環境等を整えることにあります。
ただし、最終的な意思決定権はトップにあります。
3:Orange(オレンジ・達成型)目標第一の合理的な組織
階層構造を持ちながらも、階級(役職)は流動的です。つまり、成果を出せば昇進できる組織となっています。現代の日本では一般的な組織形態でしょう。
成果が最重要となっているため効率化や数値管理が重視されています。一方で、競争の過激化や過重労働、ストレスの増大など、”仕事のために生きる”状態になってしまうことも。この段階は、機械にたとえられるように、従業員の人間らしさが失われることにつながっていると言えます。
2:Amber(アンバー・順応型)トップダウンの階層構造に基づく組織
階級による上下関係が厳格で、役割も明確になっています。個人の力や考えではなく、役割を全うすることにより目標達成を目指します。
安定して秩序だっているものの、自発的な発言や新しいアイデアなどが生まれにくく、環境の変化に対応しにくい特徴があります。
1:Red:(レッド・衝動型)支配的なトップによる組織
個人の力で組織を構成しており、メンバーはリーダーの力に依存しています。目の前の利益を短絡的・衝動的に求める、原始的な形態です。

ホラクラシー組織

ホラクラシー組織は、役割(ロール)に基づくチームによって活動する組織形態です。ティール組織の形態の一つとして位置づけられることもあります。次のような特徴を持っています。

  • 権限が分散されている
  • 「ロール(役割)」が明文化され、その役割が人に紐づいている
  • 「サークル」と呼ばれるチームが組織の基本単位。サークルは複数のロールからなっている
  • 「ホラクラシー憲法」と呼ばれるガイドラインで、サークルの決済や運営方法、意思決定プロセスなどを定めている

ホラクラシー組織では、ロールやサークルが入れ子構造となっています。各ロール、各サークル毎に「目的、権限、責務」が定められており、これに従って仕事をすることになります。

従来の組織であれば主に一つの役職を任された人が、暗黙的な役割を果たすことになります。その役職の中の役割(業務)には、得意なものも苦手なものも混じっています。戦略策定が得意でも、部下との対話によるピープルマネジメントが苦手ということもあるでしょう。

ホラクラシー組織では、役割毎にアサインされます。つまり、戦略策定のロールの人と、ピープルマネジメントのロールの人がいるわけです。一人ひとりが能力を発揮しやすい適材適所の取り組みが実現できます。

具体的な事例としては、オンライン靴屋「Zappos(ザッポス)」が有名です。

自律型組織のメリット

自律型組織の大きな特徴は、個人やチームの裁量が大きくなることにあります。上司やトップの判断を待たずにどんどん動けることで、スピーディーかつ柔軟な対応をすることができます。こうした特徴がもたらすメリットを紹介します。

意思決定が速くなる

従来の組織では計画を重視するため、状況などの変化に対応するのが遅れがちになります。現場では肌感覚でつかめている変化が、トップに伝わるまでに時間がかかりますし、計画の変更などの意思決定には様々な人の承認、調整が必要となるでしょう。それぞれの立場や損得からくる社内政治のようなもので、余計な時間を費やすこともあり得ます。

自律型組織においては、承認のプロセスが格段に減るため、意思決定をすばやく行うことができるようになります。それにより、顧客ニーズの変化など課題に対してスピーディーに対応できます。すばやく対応を行うことで、対応策の効果検証や改善といったPDCAを回すことができるため、より精度を高めた打ち手を出すことができます。

個性を発揮しやすくなり、自分らしく働ける

階層型組織のデメリットとして、上下関係による支配や同調圧力があります。部下が自分の考えで良いと思ったものと、上の判断がうまく噛み合わなかった際に、指示や立場を理由に上の判断を優先させることがあるでしょう。その判断の成否は状況次第ではありますが、こうした状況は従業員の個性をつぶすことになりかねません。別の表現をすると、階層型組織は、心理的安全性が低い組織になりやすいと言えます。

「心理的安全性」
ハーバード大学の組織行動学の研究者エイミー・エドモンドソン教授によって提唱された概念
「チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だということがチームメンバーに共有される信念」

自律型組織においては、個人の裁量が大きいために自分の判断で、行動することができます。従来の組織よりも自由度が高くなり、個人が自分の仕事に責任を持ち、主体的に行動することが求められます。そのため、個人の成長や能力の向上にもつながります。

また、同調圧力が小さく、心理的安全性が確保されやすい環境にあります。従来の組織では、反対されたり嫌がられたりするようなユニークな取り組みも、個人の責任で行うことができます。

こうしたことから、個人と組織の生産性や創造性を高めることにつながります。自分の選択によって行動できるため、自分らしく働きやすい環境とも言えるでしょう。

エンゲージメント、働きがいの向上

自律型組織は、エンゲージメント向上に期待できます。

自律型組織では、主体性を発揮することが求められます。主体性を求められるということは、自分が状況や課題に応じた行動をするということ。単に指示通りに対処するのではなく、当事者意識を持って行動するようになります。

指示通りに対処する状況は、きちんと行えたかが評価される状況と言えます。こうした状況では、当事者意識や内発的動機づけはあまり生まれてきません。自分の意志や想いによって行動するからこそ、状況に対して当事者意識や責任感を持つことができます。また、その結果によって、お客様や会社への貢献につながっていることを実感しやすいので、達成感や自己肯定感にもつながっていくでしょう。

報酬や評価などの外的要因だけではなく、ビジョンに共感し内発的動機づけが生まれやすい組織に対しては、「もっと貢献したい」「この会社で働けてうれしい。この人たちと一緒に働けてうれしい」といったエンゲージメントの向上が期待できます。

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柔軟な働き方を実現しやすい

テレワークなどの働き方も、自律型組織においては採用しやすいでしょう。

コロナが収まってきたことで、従業員の管理の難しさやコミュニケーションの取りにくさなどから、テレワークを導入していた企業でも出社することを求めるようになってきました。

在宅勤務にするのか、出社するのかといったことは自律型組織においては、個人の裁量であり、大きな問題とはならないでしょう。

多様な働き方、価値観が認められる時代にあるため、柔軟な働き方が認められることがメリットと言えます。

自律型組織のデメリット

自律型組織には多くのメリットがありますが、一方でいくつかのデメリットも存在します。個人の裁量が大きいことや、トップダウンではないことには、デメリットの側面もあるものです。

組織としての軸が必要

個人やチームの裁量が大きいからといって、いくら良いと思っていたとしても、それぞれが好き勝手に判断していたのでは、組織としての一貫性がなくなり、中途半端な状態になりかねません。

階層型組織の場合には、トップの計画や指示が重視すべきものでありました。自律型組織においては、その組織のミッションやビジョン、パーパス、ルールが重視すべきものとなります。

こうした組織の価値観があいまいで、従業員に浸透しないでいると、自律型組織はうまく機能しないことになるでしょう。

自律型組織が合わない、なじめない人もいる

自律型組織の構造は、これまでの組織と違います。これは会社組織だけではなく、学校の構造からしても違います。少なくとも、これまでの大学入試までは知識を頭に入れることや、その知識を活用することが求められてきました。正解がある問題を出されてきました。つまり、学校にしろ、会社にしろ、正解や指示があることが前提でした。

しかし、自律型組織には、こうしたことがあまりありません。自分で判断し、行動することが求められます。指示に従っていればいい働き方に慣れきった人にとって、自律型組織の考え方は合わないこともあるでしょう。

階層型から自律型に変革する際には、どのような社員であっても、変化に戸惑うことになるでしょう。

主体性の発揮、自己管理能力が重要

個人やチームの裁量が大きくなるため、一人ひとりの自己管理能力(セルフマネジメント力)が大事になってきます。

従来の組織では、それほどやる気のない人だとしても、(必要な能力と環境があれば)最低限やるべき業務はこなす人が大半だと思います。現場に指示を出し、管理する上司がいることで、半強制的に仕事をすることになります。最低限のラインを構築しやすいのが、従来型の組織のメリットと言えます。

一方で、管理する上司の目が弱くなることで、サボりやすくなると言えます。個人やチームが、適切な目標を持ち、セルフマネジメント力を発揮できなければ、生産性や充足感は低下していくでしょう。

情報の扱いが難しくなる

自律型組織を目指す上で、情報のオープンさが求められるようになります。従来の組織では、権限や立場によってアクセスできる情報が限られてきます。しかし、個人の裁量が大きくなり、主体的な判断をするためには、判断材料となるものなど必要な情報を手に入れられることが欠かせません。つまり、多くの情報を誰でも知ることができる状態になります。

すると、どのように情報を集約するのか、閲覧できるようにするのかといった課題が生まれてきます。階層型であれば、ある程度自然と集約されていきましたが、自律型組織では様々なところで意思決定がなされているので、情報共有や一元化に工夫が必要となってきます。

また、多くの情報に誰でもアクセスできるオープンな状態になるということは、適切なセキュリティ対策も必要になってくるでしょう。

変革する場合には、抵抗や誤解、時間を受け入れる必要がある

自律型組織は、従来の組織とは異なったシステムです。もし、階層型組織から自律型組織へと変革を目指すのであれば、抵抗を受けること、自分や社内の自律型組織に対する誤解、変化に時間がかかることなどのリスクを受け入れる必要があるでしょう。

  • 情報のオープン化
  • ミッションに基づく、個人の裁量が大きい自由な働き方
  • 役職のないフラットな組織

こうしたイメージは、従業員にとっても魅力的なものに映るかもしれません。しかし、これらの言葉から期待する状況が、実際には異なっていれば裏切られたように感じたり、失望感になったりします。

コンサルティング会社RELATIONS株式会社のnoteでは、自社の変革の際の困難が記されています。

結論から言えば「フラットでルールが少ない」というのは、(ティール型など)自律分散型の組織に対するよくある誤解でした。そして、誤解にもとづいたメッセージを放ったことで、「秩序」が弱まり、組織風土がかなり悪化しました。

「フラットでルールが少ない組織」はストレス地獄。自律分散型の組織の正しい創り方

それでも変革の取り組みを続けたことで、着実に変化を起こすことができたそうです。

自律型組織を目指すプロセスでは、一方的に決定し、それを守らせることもできないでしょう。対話を重ね、必要な打ち手を地道に打ちながら、改善する覚悟が必要だと言えます。

先進的な自律型組織の事例を紹介

ビュートゾルフホームページのヘッダー画像。オランダの家屋の写真
出典:ビュートゾルフ(Buurtzorg)

2006年の設立時には4名のメンバーからスタートして、現在は15,000名の従業員が働く組織へと成長。オランダの在宅介護の組織「ビュートゾルフ(Buurtzorg)」です。ビュートゾルフは、ほとんどすべての項目で競合他社に勝っているといいます。具体的には

  • 顧客満足度
  • 従業員満足度
  • コストの低さ(オランダの同業他社より67%安い)
  • 利用者を待たせないこと

この組織には、企画部門、人事部門、マーケティング部門などのバックオフィス部門はなし。マネージャーさえいない。ビュートゾルフの設立者ヨス・デ・ブロック氏が、看護師やマネージャーとしての経験から、従来の方法には頼らないことに決めました。彼らの特徴は、

  • 看護師が12人になるたび、チームを分ける
  • 1チームで担当地域の50名ほど患者を看る。どの患者を何人受け持つかは自分たちで決める
  • チームは提供するサービスのすべてに責任を負っている(サービス提供、仕事や責任の分担、研修計画・休暇のスケジューリング、メンバーの評価・採用など)
  • 「地域コーチ」が各チームをサポートする。地域コーチは、チームに対する意思決定権がなく、チームの成果や収益に対する責任も問われない。明確に定められた職務もない
  • 独自開発のITシステムによって、ナレッジの共有や同僚への相談ができる
  • CEOのヨス・デ・ブロック氏は全メンバーとコミュニケーションを取れるようになっていて、ブログで自身の考えを発信している。その考えに対するアドバイスを求めることができる
  • 本部には50名ほどが在籍していて、保険や契約などのペーパーワークを担当している

この先進的な組織は、その土台に「信頼」があるのです。きちんとトレーニングを受けた現場の看護師は、優れた仕事をしてくれる。単にいい仕事をするだけではなく、「自分の使命を果たす」という意欲を感じながら、生き生きと働き能力を発揮するようになるのです。こうした信頼が、優れた成果を生み出しています。

ビュートゾルフのモデルの優れた点は、トレーニングを受けた看護師は良い仕事をしてくれると皆が信頼を置いている点にある。業務を標準化するなどと言ったら、自律性を失うことになりかねないと、彼らは敬遠するに違いない。指揮命令系統のある職場で働く人たちにとっては奇妙に聞こえるかもしれないが、ビュートゾルフ式の運営は「信頼」がベースにあり、それによってすべてが機能しているのだ。

ビュートゾルフ:最も急進的な自律型組織

現場の看護師こそ、その業務に精通している。仕事に対する責任を彼ら彼女らの手に戻さなければならない。そのためには、業務を細分化せず、現場の人々に作業をまるごと委ねるべきだ

アストリッド・フェルメール ベン・ウェンティング 著 『自主経営組織のはじめ方――現場で決めるチームをつくる』英治出版

自律型組織づくりのポイント

ビジョンへの共感とルールの策定

個人の裁量が大きい自律型組織において、なにを判断基準・行動指針とするのかというと、ビジョン(ミッションやパーパスということも)、つまり組織の価値観です。そして、守るべきルールがあります。

ティール組織の場合には経営者の哲学や企業文化が、ホラクラシー組織の場合にはホラクラシー憲法やロールによって、遵守すべきことが定められている

組織としてなにを大切にして、なにを目指していくのか。明確な指針となるものがあるからこそ、普段の業務でも適切な判断をすることができます。

たとえば、40年以上黒字経営を続けたユニークな格安航空として著名な「サウスウエスト航空」は「従業員第一主義」というミッションと「短距離直行便を頻繁に利用する州内旅行客に、良質で低価格のサービスを提供すること」という基本戦略があります。この指針のおかげで、コストがかかる取り組みは避けるべきだが、コストがかからず従業員も乗客も楽しめるならやってよいと判断ができます。その一つが、ラップによる機内アナウンスなわけです。

ビジョンやミッションを明確にするプロセスは組織によって異なりますが、トップダウンでビジョン・ミッションを策定するというよりは、従業員とともに描くことで、より自律型組織の実現へと向かえるでしょう。

トップがビジョンやミッションの策定の際に起こりがちなのが、社員に浸透しないということです。トップには自分事としてビジョンやミッションを感じられますが、そこに関わっていない社員からすれば自分事とは感じにくいでしょう。結果として、形骸化した標語となってしまい、策定の効果が現れないことになりかねません。

メンバーも含めてビジョンやミッションを定めるのであれば、自然と対話を積み重ねることになります。その中で、問題意識やそれぞれの想いをお互いに理解することになるでしょう。そうすることで、単なる標語ではなく、メンバー全員が共感できる魂の入ったものとして、ビジョンを打ち立てることができます。

情報をオープンにする

階層型においては情報格差が生まれることは常ですし、それが役職の立場を守っていることもあります。自律型組織においては、適切な判断をするために多くの情報をオープンにする必要があります。なにをオープンにして、なにを担当者以外は知ることができない状態にするのかは組織によって異なります。

給与も全てメンバーが決める組織もあれば、給与だけはオープンにしない組織もあります。

「現場教育システム tebiki」では、給与関連を除く全ての情報を共有しているそうです。なので、会社の銀行残高も公開しているのです(こんなユニーク?な形で共有されています)

出典:自律駆動型組織をつくるためのオープンな情報共有の方法

心理的安全性を高める

自律型組織、つまりフラットな組織になるということは、働く人の立場が対等になることを意味します。組織によって、完全に階層がなくなるわけではありませんが、役割によるものであることがほとんどのようです。そうなると、どのような立場の社員だとしても、自分の意見を伝えられるようになる必要があります。

階層型の組織に慣れていると、本音や問題意識を口にすることは少ないかもしれません。発言しても問題が起こらない。そうした心理的安全性を高めることが、重要になってきます。

そのためには、対話が効果的です。対話の機会をつくり、なんでも話して大丈夫なんだという空気を作っていく。それぞれの価値観や考え方を尊重するために、安易に否定せずに話を聴くことなどを決めておく。

自律型組織への歩みとして、対話は小さくとも重要な一歩となるでしょう。

まとめ

時代・環境の変化から、組織を変革していかないといけない。そんな問題意識を持っている人にとって、自律型組織は目指すべき形の一つと言えるでしょう。

一人ひとりが主体性を発揮し、やりがいを持って働くことができる組織。自らのアイデアや意思決定によって、成果や組織への貢献を実感できる。こうした状態が生まれると、働く従業員にとっても組織にとっても良い循環が生まれることになります。

自律型組織を目指す上で、お互いを理解する対話を欠かすことはできません。メンバーが共感するビジョンの明確化から、フラットな関係となった状態でのコミュニケーションなど、上下関係に頼らない対話力が重要です。一方的に説得するのではなく、両者が本音で語り合うことで、より良いアイデアが生まれてきます。これを実現できるコミュニケーションの技術が、GHCDコーチングです。

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