レジリエンスとは?ビジネスで重要なストレスを乗り超える力

「ストレスやプレッシャーで押しつぶされそう…」
「苦しい状況にあるけれど、前向きに頑張っていきたい」

こうした人にとって力になってくれるのが、レジリエンスです。困難を乗り越え、力に変えることができる。ストレスフルな現代において重要なキーワードです。

この記事では、レジリエンスに関する基本的な知識からどのように役に立つものなのか、レジリエンスの高い人の特徴などをまとめて解説しています。

ストレスやプレッシャーを乗り越えて、日々充実した時間を過ごすヒントを見つけてください。

レジリエンスに関する網羅的な内容になっています。目次から、気になる箇所を選ぶのをオススメします

目次

レジリエンスとは?困難をしなやかに乗り越え回復する力

レジリエンス(resilience)とは、ビジネスや心理学において「精神的回復力」を表す言葉です。困難に対して、しなやかに回復し、乗り越える力だと言えます。

レジリエンスとは、特に精神的、感情的、行動的な柔軟性と外的・内的な要求への適応を通じて、困難な人生経験や挑戦的な人生経験にうまく適応するプロセスと結果のことである。

Resilience | アメリカ心理学会(APA)

レジリエンスは、特定の能力、性格のことではありません。遺伝やストレスに対処するスキル、思考パターン、人間関係などの複合的な要因によって成り立っています。

ポイントとしては、

  • 誰もがレジリエンスを持っている
  • レジリエンスは鍛えることができる
  • 困難を耐える力ではなく、成長・変化をもたらす(=うまく適応する)力である

類似した言葉との違い

メンタルヘルス

メンタルヘルスは心の健康状態を指す言葉です。一方で、レジリエンスは、ストレスや困難な出来事に対して適応するプロセスと結果のことです。

ストレス耐性

ストレス耐性は、ストレスに対する抵抗力を指します。レジリエンスと似た使われ方やニュアンスを持つこともありますが、レジリエンスの場合には「いかに回復するのか」「どのように力に変えるのか」といった前進することに重きが置かれています。

ストレス耐性の6要素
  • 感知能力:ストレスと感じるかどうか
  • 回避能力:ストレスを感じやすい性格かどうか
  • 根本の処理能力:ストレスの原因・出来事をなくしたり、軽減する能力
  • 転換能力:ストレスをポジティブに捉え直せる能力
  • 経験:ストレスのかかる出来事・状況に対する経験値
  • 容量:ストレスをどの程度溜められるか

ストレスコーピング

ストレスコーピングは、ストレスに対して具体的に対処することです。

大きく2つの対処法があります。1つは、ストレスの原因そのものに働きかける「問題焦点コーピング」。もう1つは、ストレスを感じる出来事や状況に対する考え方や感じ方に働きかける「情動焦点コーピング」。

ストレスコーピングのスキルを身につけることは、レジリエンスを高めることに役立ちます。

ハーディネス

高いストレスを受けていても、健康を保つ人が持つ特性のことです。レジリエンスに比べて、ストレスに対してより積極的に対応しようとする特性です。

次の3つの要素で成り立っています。

  • コミットメント
    • 人生、生活、人間関係など、何事に対しても自分が深く関わっている感覚、傾向
  • 挑戦性(チャレンジ)
    • 変化やトラブルは、挑戦や成長の機会であると捉える傾向
  • 統制感(コントロール)
    • 自分の行動が、出来事や結果に対して影響を与える、コントロールできるという感覚

レジリエンスがビジネスで注目される理由

メンタルヘルスを守り、望まない休職・離職を防ぐ

現代は、様々なストレスにさらされる状況にあります。そのため、メンタルヘルスの不調が原因で、休職・離職する人が増えています。

過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業、または退職した労働者がいた事業所の割合は10.1%で、前年比0.9ポイントの増加となった

過去1年間にメンタルヘルス不調で1カ月以上休業・退職した労働者のいる事業所割合は10.1% ――厚生労働省の2021年「労働安全衛生調査(実態調査)」

ストレスフルな状況や困難な課題に直面した際、レジリエンスがあれば、それらの状況を乗り越え、心身のバランスを保つことができます。これにより、望まない休職や離職を防ぐ助けになります。

休職や離職は、それ自体も個人の精神面や収入にネガティブな影響を与えます。キャリアに響くこともあるでしょう。また、会社や同僚にとっても、仕事量の増加や生産性の低下などの負担につながります。

レジリエンスを高めることは、個人も組織も守ることにつながります。

困難・逆境に満ちたVUCA時代に対応する

VUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)とは、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性を表す言葉で、現代のビジネス環境を特徴づけるキーワードとなっています。

このような不安定で予測困難な状況下では、個人のメンタルヘルスが脅かされ、ストレスが増加する傾向にあります。そのため、レジリエンスを高めることは、VUCA時代を生き抜く上で重要になってきています。

レジリエンスを高めることで、変動する状況に柔軟に対応し、不確実な未来に対しても前向きな姿勢を保つことができます。また、複雑な問題に対しても効果的な解決策を見出し、曖昧な情報をもとに適切な判断を下す精神的な土台となるでしょう。

周囲から受けるプレッシャーや思い通りいかない状況を乗り越える

ビジネスの世界では、日々様々なプレッシャーや予期せぬ困難に直面します。
周囲からの期待や競争、プロジェクトの遅延、部下の思わぬ行動など、思い通りにいかない状況はビジネスパーソンにとって避けられない現実です。

こうした状況下で、メンタルヘルスを保ちながら効果的に対処するためには、レジリエンスが効果的です。レジリエンスを高めることは、自分自身を守り成長させることであり、部下や同僚といった周囲のメンタルヘルス・レジリエンスを維持し高めることにもつながります。

自分が精神的に安定していなければ、仕事に集中できなかったりイライラを他人にぶつけたりする可能性が高まります。その影響は、周囲にも及びます。反対に、周りが強いストレスやプレッシャーを感じている中で、レジリエンスを発揮することができれば、チーム・組織として困難を乗り越える力となることができます。

レジリエンスを高める効果・メリット

ストレスがたまりにくくなる

慢性的な小さなストレスのことを「マイクロストレス」と呼びます。親しい人との別れや仕事上の大きなトラブル・ミス、あるいは転勤や転職といった大きなストレスに対して、マイクロストレスは日常的に経験するちょっとしたストレスです。

マイクロストレスが積み重なると、モチベーションや集中力の低下、判断力の低下など仕事のパフォーマンスを下げてしまいます。もっと酷くなると、うつ病など精神的な問題に至ることも。

レジリエンスを高めることで、ストレスの蓄積を抑えて、日々スッキリした気持ちで仕事に向かえるようになります。

成長につながり、行動力を高める

レジリエンスを高めることは、個人の成長と行動力の向上に直結します。困難な状況やプレッシャーに直面した際、レジリエンスが高い人はそれを乗り越え、自己成長の機会として捉えることができます。失敗を受け入れ、積極的に新しい挑戦を行うことができるため、結果として行動力が高まります。

このプロセスは、自己効力感を高めることにも繋がります。自己効力感とは、自分自身の力で困難を乗り越えることができるという信念のことを指します。レジリエンスが高まることで、この自己効力感が強化され、さらに行動力が向上します。これにより、目標達成や夢の実現に向けて、一歩踏み出す勇気を持つことができるようになります。

人間関係が良好になる

レジリエンスを高めることで、私たちの人間関係はより良好なものとなります。レジリエンスが高い人は、ストレスや困難な状況に直面しても冷静さを保ち、他者とのコミュニケーションを円滑に取ることができます。これにより、誤解や対立が生じてもすぐに対処できるので、人間関係が良好な状態を維持することができます。

また、レジリエンスが高い人は、他者への共感やサポートを惜しまない傾向があります。これにより、信頼関係が築かれやすくなり、人間関係がより強固なものとなります。さらに、ポジティブな人間関係は、私たちのメンタルヘルスにも良い影響を与え、ストレス耐性を高めることに繋がります。

他者に親切にすること自体が、レジリエンスを高めるため、好循環を生み出します。

失敗への恐れや恥の感情を軽減する

レジリエンスを高めることで、私たちは失敗や挫折に対する恐れを軽減し、恥の感情と上手に付き合うことができるようになります。失敗を経験した際にも、それを成長の機会と捉え、前向きに取り組むことが可能です。これにより、失敗から学び、次に活かす力を身につけることができます。

また、レジリエンスが高い人は、自己評価が適切であり、失敗を自分自身の価値と直接結びつけることなく、客観的に状況を分析しやすくなります。これにより、失敗を過度に恐れることなく、新しい挑戦を続けることができるのです。

全体的な幸福度が高く、生活満足度も高くなりやすい

2022年5月に『International Journal of Environmental Research and Public Health』誌に発表された研究(R)によると、レジリエンス、対処能力、感情的知性を持つ人は、レジリエンスが低い人よりも全体的な幸福度が高く、生活満足度も高い可能性が高いことが示唆されたそうです。

ストレス軽減そのものの効果や、それに伴った行動の違いなどが、幸福度に影響を与えているのではないかと推測できます。

レジリエンスは単にストレスを軽くするだけではなく、人間関係や行動にも影響を与えるため、充実した日々を送る上で役立つポイントとなるでしょう。

レジリエンスを心理学から理解する

どのようなときにレジリエンスが発揮されるか?

レジリエンスは傷つかない力ではなく、ストレスから回復する力のことです。レジリエンスの働きというのは、「回復する力」が「悪化する要因」を上回っているときに起こります。

レジリエンス(回復する力) > 悪化させる要因

レジリエンスを促す要因が、悪化要因を上回ることで回復していきます

脆弱性要因とレジリエンスを促進する要因

脆弱性要因(悪化させる要因)とレジリエンスを促す要因(回復する要因)について、2007年に発表されたものを紹介します。海外研究のため、日本ではあまり見られないだろう要因もあると思いますが、レジリエンスを深く理解する上で役立つものになっています。

スクロールできます
脆弱性要因レジリエンスを促進する要因
内的要因女性であること
安全であるという感覚の低さ
社会的支援を受けている感覚の低さ
神経質特性の高さ
精神病理が事前に存在すること
過去のトラウマになる出来事に対する否定的な評価
自尊心
信頼
機知に富む、高い処理能力
自己効力感
自己統制感
安全な愛着
ユーモアのセンス
自己充実感
達成感
楽観
対人能力
外的要因教育水準の低さ
移民であること
過去のトラウマになる出来事
暴露の深刻さ(深刻または持続的なトラウマ)
安全性
宗教
強いロールモデル
情緒的な支え:他者から理解、交友、帰属意識、肯定的な評価を受ける度合い
出典:Post-traumatic stress disorder, resilience and vulnerability

出来事が与えるストレスの大きさもありますが、その衝撃に対して自尊心や社会的なつながりなどがあれば、早く立ち直ることができるようになります。

一方で、トラウマを抱えていたり、自己肯定感の低さや対処スキルが不足していたりすると、なかなかストレスから立ち直ることができず時間がかかってしまうことがあります。ときには、長期的なストレスとなり、メンタルヘルスに悪い影響を及ぼすこともあります。

自分のレジリエンス度合いを診断する

簡単に診断できるサイトを紹介

ストレス・レジリエンス診断テスト(精神的回復力)

最新の心理学に基づく本物志向の心理テストを掲載する「ペルラボ(ペルソナ・ラボラトリー)」によるテストです。東北大学大学院の徳吉氏と北海道医療大学の森谷氏による「ブリーフ・レジリエンス尺度」に基づいています。

全30問、5段階の選択式(まったくあてはまらない~かなりあてはまる)の簡単な診断テストです。

レジリエンス力診断

公認心理師が監修した診断で、心理カウンセリングやコミュニケーション講座などを提供する株式会社ダイレクトコミュニケーション掲載。全8問、5段階の選択式(全くそう思わない~とてもそう思う)の簡単な診断テストです。

専門的な尺度を紹介

レジリエンスの尺度は、現在のところ世界で共通するような明確に定められたものはありません。様々な研究者による尺度が提唱されています。

代表的な尺度をいくつか紹介します。PDFから自分でチェックすることもできます。

スクロールできます
レジリエンススケール(Resilience Scale:RS), Wagnild&Young
(1993)
個人的コンピテンス(Personal Competence)と自己と人生の受容(Acceptance of Self and Life)の 2 因子 25 項目。様々な年代で使用することができ、高い内的整合性や妥当性が示されており、現在のところ最も信頼できるレジリエンス尺度である。
英語PDF
森らのレジリエンス尺度, 森 他, 2002① I am 因子:自分自身を受け入れる力、② I can 因子:問題解決力、③ I have 因子:他者との信頼関係構築力、④ I will/do 因子:成長力の 4 下位因子から構成される29 項目 5 件法の尺度。
大学生の自己教育力とレジリエンスの関係  学校教育実践学研究 8, 179-187, 2002.
精神的回復力尺度(Adolescent Resilience Scale; ARS)
小塩 他, 2002
精神的な落ち込みからの回復を促す心理的特性である精神的回復力を測定する尺度。21項目で構成されており,全体を精神的回復力としても,3つの下位尺度(新奇性追求,感情調整,肯定的な未来志向)に焦点を当てた得点化も可能である。
日本語版pdf
二次元レジリエンス要因尺度(Bidimensional Resilience Scale; BRS)
平野 他, 2010
レジリエンス要因を資質的な要因と獲得的な要因とに分けて捉えるために,Cloningerの気質–性格理論(TCI)を用いて二次元レジリエンス要因尺度(BRS)を作成
質問票PDF手引き
レジリエンス(精神的回復力)とは?その促進方法と測定方法、システム化に向けた調査

レジリエンスが高い人の特徴

コントロール感覚を持っている

レジリエンスが高い人々は、自分自身の人生や状況に対してコントロール感覚を持っています。外部の状況や他人の行動に振り回されることなく、自分自身の選択と行動が結果を生み出すと信じています。このコントロール感覚は、困難な状況に直面した際にもポジティブな影響を与え、効果的に対処し、乗り越える力を強めてくれます。

言い換えると、「自分にはできる」という自己効力感が高い人です。自分の能力を信じ、目標に向かって積極的に行動することができます。また、失敗や挫折を経験しても、それを乗り越えるための学びとして捉え、次に活かすことができるのです。このようなコントロール感覚を持つことで、ストレスの影響を受けにくくなり、メンタルヘルスを保ちやすくなります。

セルフコンパッションを発揮できる

セルフコンパッションとは、自分に対する優しさ、思いやりのことです。困難な状況や失敗を経験した際にも、自分を非難することなく受け入れる能力のことを指します。これにより、ネガティブな感情や状況から立ち直りやすくなります。

セルフコンパッションを持つことで、自己評価が低下することなく、失敗や挫折を乗り越える力を持つことができます。また、自分自身の感情や状況を客観的に観察し、冷静に対処することが可能になります。ストレス耐性が高まり、精神的なバランスを保ちやすくなります。

周りに助けを求められる

レジリエンスが高い人々は、困難な状況に直面した際に、周囲に助けを求めることができる強さを持っています。必要な時には他者と協力し、サポートを受け入れることができる柔軟性を持っています。これにより、問題解決のプロセスがスムーズに進み、ストレスを効果的に管理することが可能になります。

周りに助けを求めることは、信頼関係を築く上でも重要な要素です。他者と協力することで、人間関係が深まり、チームワークが向上します。これはビジネスの現場において非常に価値のあるスキルであり、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。

柔軟に考えることができる

レジリエンスが高い人は、困難な状況に直面しても柔軟に考え、異なる視点から問題を捉えることができる能力を持っています。

多面的に物事を見ることができるため、ポジティブな面を見つけたり、成長・改善の要素を見つけたりすることができます。ストレスを軽減し、感謝の念を持つことにつながります。

固定観念にとらわれず、創造的な思考を用いて解決策を見出すことができます。この柔軟な思考は、変化に対応し、逆境を乗り越える上で非常に重要な役割を果たします。

また、柔軟な考え方を持つことで、新しいアイデアや異なるアプローチを受け入れることができ、イノベーションを促進します。これにより、個人だけでなく、チームや組織全体のパフォーマンス向上にも役立ちます。

自尊感情が高い

レジリエンスが高い人々は、自己評価が高く、自分自身を大切にする傾向があります。彼らは自分の強みを理解し、困難な状況に直面しても自己効力感を持って取り組むことができます。この自尊感情は、ストレスやプレッシャーに対する耐性を高め、ポジティブな結果を生み出す原動力となります。

自尊感情が高い人は、自分の価値を理解し、他者と比較することなく自分自身を受け入れることができます。これにより、自己肯定感が高まり、自分自身に対する信頼が築かれます。また、失敗やミスを経験しても、それを個人の価値の低下と捉えることなく、成長の機会として捉えることができます。

楽観的に考えられる

レジリエンスが高い人は、困難な状況に直面しても楽観的な視点を持ち続けることができます。彼らはネガティブな出来事を一時的かつ特定の状況に限定されたものと捉え、「なんとかなる」「行動すれば克服できる」と考えることができます。この楽観的な考え方は、ストレスや挫折に対する耐性を高め、前向きな行動を促進します。

楽観的な人々は、問題に対して積極的に取り組み、解決策を見つけることにエネルギーを注ぎます。彼らは困難を乗り越えることができると信じており、その信念は彼らの行動と成果に反映されます。また、ポジティブな人間関係を築くことができ、周囲の人々からのサポートを受けやすくなります。

問題解決能力を発揮できる

ストレスに対処する方法は、ストレスに対する考え方や感じ方といった自分の内面にアプローチする方法(情動焦点コーピング)と、原因そのものに対処する方法(問題焦点コーピング)があります。

問題解決に取り組むことは、ストレスを軽減するとともに、現実的な課題の解決にもつながります。人間関係の課題もあれば、プロジェクトの進捗、部下の指導など様々です。

どのような問題であれ、それを解決することは仕事を進め、目標を達成することに役立ちます。仕事の成果や周囲から評価・信頼を得ることにつながります。

ストレスに対処するスキルを持っている

どれほど高い問題解決能力を持っていたとしても、全てのストレスの原因を解消することはできないでしょう。しかし、ストレスに対処するスキルがあれば、ストレスの原因がなくなるのを待つ必要はありません。

  • リラックスして、心身のストレスを取り除く習慣
  • 考え方や感じ方を見直す心理学的アプローチ
  • マインドフルネス瞑想

ストレス対策になるスキルや習慣を持つことにより、メンタルヘルスを守ることができます。レジリエンスが高い人々は、ストレスをポジティブなエネルギーに変換し、それを成果につなげることができます。

高い自己認識を持っている

レジリエンスが高い人々は、自己認識のレベルが非常に高いと言えます。彼らは自分自身の感情や考え、行動パターンを理解し、それをコントロールする能力を持っています。この高い自己認識は、彼らが自分自身の強みや弱みを把握し、それに基づいて適切な判断を下すのを助けます。

また、高い自己認識を持つことで、彼らは自分自身に対して正直であり、自分の価値観や信念を大切にします。これにより、彼らは他者の意見や評価に左右されることなく、自分自身の信念に基づいて行動することができます。

高い自己認識を持つことは、ビジネスの世界でも非常に重要です。自己認識が高い人々は、自分自身の感情やストレスのサインを早期にキャッチし、それに適切に対応することができます。これにより、彼らはストレスの影響を最小限に抑え、効率的に仕事を進めることができます。

心が折れやすい人の特徴

ストレスやプレッシャーに圧倒され、無力感を感じやすい

ストレスやプレッシャーに圧倒されやすい人々は、しばしば無力感を感じることがあります。困難な状況に直面したとき、自分自身で解決策を見つけ出すことが難しいと感じることが多いです。これは、自己効力感が低いため、自分の力で状況を変えることができると信じることができないからです。

このような人々は、ストレスの原因となる出来事や状況をコントロールすることができないと感じることが多く、その結果、自分を犠牲者として見ることがあります。彼らは「どうせ自分にはどうにもできない」という思い込みを持ち、挑戦することを避ける傾向があります。

目の前の状況に振り回されやすい

出来事や他人の意見に、強く影響を受けやすい傾向があります。自分の内面よりも外部の状況に焦点を当てがちで、それが原因で感情の起伏が激しくなることがあります。

状況が良いときは幸せを感じますが、何か問題が起こるとすぐにネガティブな感情に囚われてしまいます。そのため、ストレスを感じやすい状態にあります。

諦めやすい、先延ばししやすい

仕事をしていれば、すぐに成果につながらないことや難しいことにじっくり取り組まなければならないことがあるでしょう。

レジリエンスが低い人は諦めやすかったり、先延ばししやすかったりします。重要なタスクを先延ばしにすることで、一時的な安心感を得るものの、長期的にはストレスや不安を増加させる結果となります。

このような傾向は、自己効力感の低さや完璧主義、恐れに基づく決断など、様々な心理的要因に起因することがあります。レジリエンスが低いとされる人々は、これらの要因によって、自分自身を信じることが難しくなり、簡単に諦めてしまうのです。

効果の薄い対処方法にばかり頼りがち

レジリエンスが低い人は、ストレスや困難な状況に直面した際に、短期的な安堵を求める傾向があります。

たとえば、過度な飲酒、食べ過ぎ、ギャンブル、過度なショッピングなどです。これらの行動は一時的にはストレスを忘れて楽しいかもしれませんが、長期的には問題を解決するどころか、新たな問題を引き起こすことがあります。

レジリエンスを高める8つの要因

レジリエンス研究の第一人者であるペンシルベニア大学ポジティブ心理学センターのカレン・ライビッチ博士による、レジリエンスの8つの要素を紹介します。

自己認識

自分の感情や思考、強み・弱み、価値観や人生の目標など、自分のことをよく知り、よく気づくことです。まずは、自分の感情に気づくことです。自分の感情を詳細に言葉で表すことができる人ほど、ストレスに強く感情コントロールに優れています。

下記の記事で、感情を言葉にする力について紹介しています。

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自制心

自分の感情や行動を律することができる力です。ストレスフルな状況に適切に対処するために、その場の感情にとらわれずに行動することが欠かせません。

精神的敏捷性

物事を柔軟に捉えて、多面的なアイデアや考えを持って対処できる力です。冷静に状況を見つめて、適切な解決策を迅速に行います。

楽観性

行動することによって、未来はより良いものになる、より良くすることができるという感覚です。なにもしなくても状況が好転するという意味ではなく、「成長できる」「行動によって、結果を出せる」といった前向きな考え方のことです。

自己効力感

「自分にはできる」という感覚です。これまでの努力の積み重ねや、過去に困難を乗り越えた経験、あるいは周囲のサポートなどによって培われます。

つながり

自分を応援してくれる人、支えてくれる存在がいることもレジリエンスを高めてくれます。自分をサポートしてくれる存在だけではなく、自分が助けたいと思う存在がいることでも得られます。

また、直接的なつながりがなくても、自分の仕事の意味・意義を感じることや、間接的に支えてくれている人たちを感じることにより、つながりや感謝を感じることができます。

たとえば、営業をして顧客のところに足を運んでいるとすれば、資料作成のサポートや経費処理などをしてくれる社内の人はもちろん、電車や車といった移動手段、パソコンやインターネットといった仕事道具に携わる人たちがいてくれるからこそ、今目の前の仕事ができていることに意識を向けてみることです。

生物学的要素(遺伝子)

レジリエンスは様々な要素によって成り立っていますが、遺伝の影響もあるとされています。ただし、あくまでも要素の一部であり、レジリエンスを高める要因のほとんどは自分の選択によって構築・改善することができます。

ポジティブな社会制度(家族、コミュニティー、組織など)

つながりの項目でも見たように、レジリエンスは人間関係の影響も受けています。必ずしも、家族や会社のような近い関係だけではなく、たまに参加する趣味の集まりなどのゆるいつながりがポジティブな影響を与えてくれることもあります。

レジリエンスを高める方法

すぐに取り組める具体的な方法は、下記の記事で紹介しています。

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レジリエンスを築く10の方法

アメリカ心理学会(APA)が以前紹介していたものです(R)。

  1. つながりをつくる(Make connections)
  2. 危機を乗り越えられない問題として捉えない(Avoid seeing crises as insurmountable problems)
  3. 変化は人生の一部として受け入れる(Accept that change is a part of living.)
  4. 目標に向かって進む(Move toward your goals)
  5. 断固とした行動を取る(Take decisive actions)
  6. 自己発見の機会を探す(Look for opportunities for self-discovery)
  7. 自分を肯定的に捉える力を養う(Nurture a positive view of yourself)
  8. 物事を前向きに捉える(Keep things in perspective)
  9. 希望に満ちた見通しを持つ(Maintain a hopeful outlook)
  10. 自分を大切にする(Take care of yourself)

ただし、現在はサイト上には掲載されておらず、次の取り組みが掲載されています。

【2023年10月版】レジリエンスを築く方法

  1. 人間関係を優先する
  2. グループ(コミュニティ)に参加する
  3. 自分の体を大切にする
  4. マインドフルネスを実践する
  5. ネガティブなはけ口を避ける
  6. 他人を助ける
  7. 積極的になる
  8. 目標に向かって進む
  9. 自己発見の機会を探す
  10. 物事を前向きにとらえよう
  11. 変化を受け入れる
  12. 希望に満ちた見通しを保つ
  13. 過去から学ぶ
  14. 助けを求める

詳しくはこちらの「Building your resilience」から読めます(英語)

企業のレジリエンスを高める方法

心理的安全性を高める

レジリエンスを高めるためには、企業文化として心理的安全性を確保することが不可欠です。心理的安全性とは、社員がリスクを取ること、失敗を共有すること、意見を表明することができる環境を指します。

心理的安全性が高い職場環境では、社員は自分の意見を自由に表現でき、創造的なアイデアを共有しやすくなります。これにより、イノベーションが促進され、企業全体のレジリエンスが向上します。

また、社員が失敗を恐れずに新しいことに挑戦できる環境を作ることで、失敗から学び、成長する機会が増えます。これは、個人のレジリエンスを高めるだけでなく、企業全体のレジリエンス向上にも寄与します。

心理的安全性を高めるために、以下のような取り組みがあります。

  • オープンなコミュニケーションを奨励する: 社員が自分の意見やアイデアを自由に表現できる環境を作り、フィードバックを積極的に求めることが重要です。
  • 失敗を許容する文化を作る: 失敗を学びの機会と捉え、失敗から回復する力を育むことで、社員のレジリエンスを高めることができます。

コミュニケーションが取りやすい、風通しのいい組織にする

企業がレジリエンスを高めるためには、コミュニケーションがスムーズに行われ、風通しの良い組織を作り上げることが重要です。これにより、社員は互いに協力し合い、困難な状況でも柔軟に対応することができるようになります。

コミュニケーションが取りやすい組織では、情報が透明であり、社員は必要な情報を迅速に入手することができます。これにより、問題解決のプロセスがスムーズに進み、企業全体の効率が向上します。

また、風通しの良い組織では、社員が意見やアイデアを自由に表現できるため、イノベーションが促進されます。

たとえば、次のような取り組みがあります。

  • オープンドアポリシーを実施する: 管理職が常に社員の意見や懸念を聞く準備ができていることを示すことで、コミュニケーションが促進されます。
  • 定期的なフィードバックを提供する: 社員に対して定期的にポジティブなフィードバックと建設的なフィードバックを提供することで、コミュニケーションが活性化されます。
  • フラットな組織構造を採用する: 階層を減らすことで、社員と経営層とのコミュニケーションがスムーズになります。

社員一人ひとりのレジリエンスを高める

企業がレジリエンスを高めるためには、組織全体だけでなく、社員一人ひとりのレジリエンスを向上させることが重要です。個々の社員がストレスに強く、変化に柔軟に対応できるようになれば、組織全体のパフォーマンスも向上します。

社員のレジリエンスを高めるためには、以下のような取り組みが効果的です。

  • メンタルヘルスのサポート: 社員がストレスを感じたときに相談できるメンタルヘルスのプロフェッショナルを配置することで、社員の心の健康を守ります。
  • 研修プログラムの提供: ストレスマネジメントやタイムマネジメントなど、レジリエンスを高めるスキルを身につけるための研修プログラムを提供します。
  • 適切なワークライフバランスの推奨: 長時間労働を避け、十分な休息を取ることができる環境を整えることで、社員の心身の健康を保ちます。
  • ポジティブな職場環境の構築: 互いに支え合い、ポジティブなフィードバックを積極的に行うことで、職場の雰囲気を良くし、社員のモチベーションを高めます。

チャレンジを評価する文化をつくる

企業がレジリエンスを高めるためには、チャレンジを評価し、失敗を恐れずに新しいことに取り組む文化をつくることが重要です。このような文化があれば、社員は困難な状況に直面しても前向きに取り組むことができ、結果として企業全体のレジリエンスが向上します。

  • 失敗を許容する: 失敗を責めるのではなく、学びの機会として捉え、次に活かすことを奨励します。
  • 挑戦を奨励する: 社員が新しいことに挑戦することを積極的に奨励し、その努力を評価します。
  • フィードバックの重視: ポジティブなフィードバックだけでなく、建設的なフィードバックも積極的に提供し、社員の成長をサポートします。
  • リスクを管理する: 挑戦はリスクを伴いますが、適切なリスク管理を行うことで、失敗から学びつつも大きなダメージを避けることができます。

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